男子バスケ篠山竜青、五輪代表落選の気持ち。その後すぐにテレビ解説を引き受けた理由 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by アフロスポーツ

 東京五輪、男子日本代表は世界ランキング2位のスペイン、同16位のスロベニア、同4位のアルゼンチンと同組だった。同42位の日本にとっては、すべて格上だったが、渡邊と八村塁というNBAプレーヤーを加えたチームは、「史上最強」と称され、期待値が非常に高かった。

 しかし、日本は3連敗に終わった。

「3連敗でしたが、以前は30点差とかで負けていた相手ですからね。やれている時間もあったので、日本の成長は感じられました。特に八村、渡邊、馬場(雄大)ら海外を経験している選手が自信を持って相手にプレーしていたので、メンタルの部分で世界に負けずにプレーできたのは大きいですね。あと、プレーでいうと世界にリバウンドで張り合うことができていたのも大きな成長だと思いました。その一方で細かいミスが多く、チャンスを自分たちで逸してしまうエラーが多い。そこはこれから世界に出て、強いチームと戦い、経験を積んでいかないといけない部分でしょう」

 男子は、グループリーグで敗退したが、女子日本代表、男子車いすバスケットボールはともに決勝に進出。試合会場には、「日本のバスケがひとつになって世界を驚かせよう」と篠山が考えた「日本一丸」というスローガンが掲げられた。女子代表と男子車いすチームは、ともに決勝でバスケットボール大国であるアメリカと対戦し、世界に少なからぬ衝撃を与えた。

「女子の戦いはすばらしかったですね。町田(瑠唯)選手の動きも同じPGとしてサイズがなくても、やれるんだという気持ちにさせてもらいましたし、チームとしても高さがない分、チームバスケットが実現されていたので感動しました。男子が見習わないといけないのは、3ポイントの試投率と決定率(41%)ですね。世界と戦うには、あれくらい入れていかないといけないと改めて感じました。車いすバスケも座っていて、あれだけ3ポイントを入れられるんだから自分はもっとシューティングをしないとダメだなと思いましたね」

 東京五輪でバスケットボールが注目される競技になったわけだが、この熱をそのまま終わらせるわけにはいかない。日本代表が盛り上げた勢いをBリーグにいかにつなげていくかは、国内バスケットボール人気をさらに高めるための大きな課題だ。

「そこはめちゃくちゃ大事ですね。今、バスケが注目され、メディアにも取り上げられている中、日本代表だけのものにはしたくない。でも、男子は代表になるとNBAの渡邊、八村に注目がいき、Bリーグに結びつきにくい感じになっているので、そこは協会、クラブ、選手が一緒になって、どうすべきか取り組んでいかないといけないと思います」

 川崎ブレイブサンダースは、川崎市がホームになるが、同じく川崎をホームにしているサッカーの川崎フロンターレと交流を深めている。2020年2月にはコラボ企画を実施し、等々力スタジアムでのフロンターレの試合後、歩いて8分の距離にある、とどろきアリーナで開催されるブレイブサンダースの試合を観戦できるようにしたり、コラボグッズなども販売された。

「Bリーグが始まる前、僕はフロンターレの試合を見に行かせてもらったんです。そこで試合、イベントを見て、いろんなことを感じて、参考にさせてもらいました。僕は川崎に根づいているクラブのお手本として見ていますので、これからも一緒に盛り上げていきたいですね」

 リーグを盛り上げ、ファンを増やしていくのは、クラブ、そして選手の努力が不可欠だが、こうして異なるスポーツの壁を越えて「ともに」という意識は、お互いのスポーツを高め、より多くのファンを獲得するために、欠かせない動きだ。今は、コロナ禍で行動や催しが制限されているので難しいが、落ち着けば必ず何かをやってくれるだろうという期待が膨らむ。

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