川崎ブレイブサンダース・篠山竜青が理想とする『SLAM DUNK』のPGは?「湘北対山王戦直前のあのセリフが好き」 (3ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro

――では、『SLAM DUNK』の物語と自身の体験が重なったような瞬間はありますか?

「それを一番強く感じたのは高校3年生のインターハイの決勝ですね。対戦相手は京都代表の洛南。3年に湊谷(安玲久司朱)、2年に辻(直人)、1年に比江島(慎)がいたチームでした。大阪での開催だったこともあり、めちゃくちゃ洛南の応援が多かったんです。それに洛南の選手は髪も自由で、ユニホームもかっこいいデザインで垢抜けていてすごく人気があった。

 片や北陸は福井の田舎からやってきた黄色いユニホームで坊主頭。しかも、応援の柄が悪い(笑)。もちろんどアウェイになるのはわかっていたので、"もうワルモノでいこうや!"ってチームメイトと話し合って決勝に臨んだのを覚えています。あの時のコートに入った瞬間の"ワルモノ見参!!"な感じは、山王戦を迎える湘北とかぶったというか。アウェイな状況でも気持ちで負けず、試合に勝てたのは、ある意味で『SLAM DUNK』のおかげだったかもしれないです」

――インターハイで優勝以降も、大学、実業団、Bリーグと、篠山選手は所属したすべてのチームで優勝を経験しています。

「振り返ってみると確かに優勝していますね。でも、優勝したことと同じくらい印象に残っているのが、Bリーグが開幕した年のファイナルで栃木(現・宇都宮ブレックス)に負けたことです。残り1分、土壇場で僕が致命的なパスミスをして負けているんです。あそこはパスじゃなく3ポイントを打つべきだったなと。今なら打ちますね。

 ただ、あの敗戦からすべてが始まった気がするんですよね。湘北に負けた山王の堂本監督が"「負けたことがある」というのが いつか 大きな財産になる"と言ったように、あの敗戦があって個人としてもチームとしても成長できたと思うんです。

 あのファイナル、代々木第一体育館を埋めた川崎と栃木のブースター(ファン)の割合は3:7か2:8くらい。まさに栃木のチームカラーである黄色に会場が染まっていました。あの試合から勝利を目指すのはもちろん、プロとして集客にも力を入れなければいけないと様々な活動が始まりました。あのファイナルがあったからこそ、川崎ブレイブサンダースは、2020-21シーズンで1試合平均入場者数が1位になれたんだなと思います」

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