クールな富樫勇樹が感情爆発。4度目の正直で叶った優勝までの軌跡

  • 永塚和志●取材・文 text by Kaz Nagatsuka
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 活動停止が明けたあと、チームは3連敗からの再スタート。チャンピオンシップ(CS)までの残り1カ月しかなく、この時点で千葉の優勝の目を危ぶむ声は多かった。

 それでも富樫は、前を向いていた。活動停止に追いやられても、それをポジティブにとらえた。

「プレー的な面では、この休みはプラスではなかったかもしれない。ですが、プレーじゃないところは(この活動停止で)もしかしたらいい方向に向いたんじゃないか......。そんな休みだったのかなと」

 4月14日、活動復活後初めての試合となったサンロッカーズ渋谷戦に敗れたあと、富樫は意外にもそう振り返った。

「シーズンの半分を越えて、気が緩んでいたというか、ふわっとした雰囲気で試合をしていたので、ブレークが入ったことで全員が危機感を持った。挑戦者のような気持ちが出てきた」

 冒頭でも触れたように、富樫は常にクールだ。だが、上の言葉は強がりのようには聞こえなかった。

 弱音は吐かない。試合に敗れたあとやミスがあっても、それを次に進むための糧にする。与えられた環境、状況を受け止めながら、その時々で最善を尽くす。それが、富樫という選手なのだ。

 千葉は3連敗から一転、その後は9連勝を収めてレギュラーシーズンを終えた。とはいえ、連勝のうち2つは延長の末のもので、簡単に得られたわけでもなかった。活動停止によりシーズン終盤に再設定された日程はタイトで厳しく、体力的にきつい状況のなか白星を9つ連ねた。

 しかし、富樫の考え方はどこまでも前向きだった。試合間隔が短くなることについて聞くと、彼は「これくらいの日程のほうが好き。あまり(合間に)練習をしなくていいので」と笑った。冗談めかした部分もあるだろうが、すべてがリップサービスでないようにも聞こえた。

 過密日程により、相手への対策が不十分になってしまう点についても、前向きだった。

「ウォークスルー(戦術等の確認のための立ち稽古)をしても、試合でそのとおりになることはほとんどない。その都度、状況を見て判断するしかないので、各個人の準備の問題だと思っています」

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