渡邊雄太がNBAで生き残る自信を得たワンプレーとは。継続した努力の結実 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/アフロ

「この世界で生き残っていくのに大事なのは、才能を含めた『実力』、『努力』、『運』も大事だと僕は思っています」

 4月の本契約直後、渡邊はNBAでの成功に必要な要因として、その3つの要素を挙げた。確かに今季、チームに離脱者が続出したことによって、渡邊に求められる役割が増えたという幸運があったのは事実だ。それでも今回の躍進は、絶え間ない練習の成果によるものに違いない。

 バスケットボール以外の趣味や興味を聞いても、決まって「僕は練習場と部屋の往復だけなんで」と答えるほどの練習の虫。5月8日の試合後、現地メディアに今季の本拠地となったフロリダ州の思い出を聞かれ、「練習以外は何も思い浮かばない」と苦笑いしながら答えていた。それほど一途な渡邊に、多少なりとも運が味方したのだとしたら、「バスケットボールの神様が見ていた」とも思いたくなる。

「厳しい時期が続いた時でも常に体育館に行って、練習を続けたことが自信につながりました。今シーズンも序盤はスポットアップのシュートが多かったのが、終盤は動きながらのスリーも決めたり、いい形でシュートが打てる機会が増えた。それは練習の賜物。今までの努力が結果に結びついてきたのかな、と思っています」

 カレッジ時代から渡邊の軌跡を追ってきた筆者は、彼の最大の武器は、継続して努力できる"辛抱強さ"だと考えてきた。そんな渡邊でも、「逃げ出したくなる時もたくさんあった」と認めている。それでも力を振り絞ってハードワークを続け、ついにすべてが結実したからこそ、サクセスストーリーは劇的になった。途方もない長い道のりを考えれば、シーズン終了後に燃え尽きたような表情にもなったこともうなずける。

 念願の本契約を手にしたあとでも、来季以降の立場が安泰になったわけではない。そんな厳しい世界だからこそ、茨の道を一気に駆け上がっていった過程は大きな輝きを放つ。この先がどうなろうと、渡邊の成功は日本バスケットボール界で語り継がれていくはずだ。

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