渡邊雄太がNBAで生き残る自信を得たワンプレーとは。継続した努力の結実

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/アフロ

 緊張感を解いたような、長く体を包んでいた闘気のスイッチをオフにしたような表情が印象的だった。現地時間5月18日、今季最後の記者会見に登場したトロント・ラプターズの渡邊雄太からは、バスケットボール人生を左右するバトルをひと段落させた解放感が感じられた。

「(シーズン終了翌日の)昨日は1日中ぼーっと、今シーズンのことを振り返っていて、いつの間にか夜になっていたという感じでした」

 それは正直な思いの吐露だったはずだ。崖っぷちの立場で戦い続けた約半年間。無保証の契約でトレーニングキャンプに参加し、オープン戦で力を誇示して2ウェイ契約を手にした。開幕後も主にベンチからの途中出場ながら役割を確立し、エネルギッシュな好ディフェンダーとしてファンの心を掴んだ。

今年4月、ラプターズと悲願の本契約を結んだ渡邊今年4月、ラプターズと悲願の本契約を結んだ渡邊 シーズン中の故障や不振の時期も乗り越え、4月19日に悲願の本契約を獲得。成績はシーズン通算50試合(スタメン4戦)で平均14.5分、4.4得点、3.2リバウンドだったが、残したインパクトは数字以上に大きかった。その道のりはスリリングかつドラマチックで、日本人以外でも一喜一憂したファンは多かっただろう。

「2ウェイ契約が結べるのは今シーズンまで。ここで結果を残し、本契約に値する選手と思われないと、今シーズンで自分のNBAの挑戦は終わってしまう状況でした」

 実際に、今季中に立場を確立できなかった場合、来季は他国でのプレーを視野に入れることも余儀なくされていたかもしれない。そんな状況で成功した要因のひとつは、プロ3年目を迎えて1年を乗り切るフィジカルの強さが手に入ったことだろう。

 過去2年、じっくりとGリーグ(マイナーリーグ)で経験を積んだことが好影響を及ぼしたように思えた。メンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結ぶも、なかなかNBAにコールアップされないことへのフラストレーションはあっただろうが、地道に力を蓄えたことは無駄ではなかった。

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