憧れはイチロー。宮澤夕貴がバスケ日本代表屈指のシューターとなるまで (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by MATSUO.K/AFLO SPORT

 リオ五輪後、心技体が整った宮澤は、2017年はWリーグのベスト5、18年は皇后杯MVPとWリーグ・ベスト5、2019年も皇后杯MVPと結果を出し続けた。しかし、昨年はコロナ禍の影響で活動自粛となった。そんななか、宮澤は自身のツイッターに「もののけ姫」などの絵を投稿し、話題になった。

「中高は美術が好きで......自粛期間は時間があって、ジブリが好きなのでよく描いていました。鉛筆削りを貸してもらったら、細かいところまで描けるようになって、すごくクオリティが上がりました(笑)」

 リーグ戦が始まり、シーズンが深まっていくとケガ人が増えた。林咲希、大沼美琴、梅沢カディシャ樹奈が相次いで故障し、12月16日の皇后杯準々決勝の富士通戦ではエースの渡嘉敷来夢が右膝前十字靱帯断裂の重傷を負った。

 決勝のトヨタ自動車戦は6人ローテーションを余儀なくされたが、宮澤をはじめ、中村優花らの活躍で勝利し、8連覇を達成。コート上でインタビューを受けた宮澤は「過去9回の優勝のなかで一番うれしかった」と涙をこぼした。

「昨シーズンはケガ人が多くて、皇后杯は『当たって砕けろ』みたいに思っていたのですが、ENEOSはスター揃いなので『勝たなきゃダメだろ』とか『勝って当たり前』とか言われて......。自分たちはどのチームよりも練習していると思っているし、どんな状況でも力があることを証明したかった。それを証明できて、すごくうれしかった」

 続くリーグ戦のプレーオフ決勝もトヨタ自動車が相手だった。宮澤は右肩の状態が悪く、痛み止めを服用して出場した。ケガ人が多いゆえ、12連覇がかかった大事なファイナル。宮澤まで欠けるわけにはいかなかったが、試合は敗れてしまった。

「準優勝に終わって悔しい思いはありましたが、やり切った感じはありました。あの試合でのパフォーマンスは自分でも100%だと思いますし、チームとしてもあのメンバーでやれることは全部できた。だから、もっとできたとは思わなかったですし、結果を受け止めて前に進んでいこうと素直に思えたんです」

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