渡邊雄太がNBAの強豪・ラプターズと契約。想起する『スラムダンク』の名言 (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

 やってきたことは間違ってはいなかった。実際に今回のプレシーズン戦での渡邊は、シュートが好調だっただけでなく、パスのタイミング、得意のディフェンスも的確だった。アピールしなければいけない立場にもかかわらず、焦り、強引さもほとんど感じられなかった。安定したプレーを見せ、ニック・ナースHCも「(渡邊は)今キャンプのサプライズ。できることはすべてやってくれた」と称賛している。

「ラプターズは全員が運動量を増やしてディフェンスし、(ボールを)取ったら速攻を狙う。僕もリバウンドを取ってそのままプッシュするのが得意なので、そういう部分も練習中や試合で何回か出せていた。そこから自分のリズムが掴めてくるので、自分に一番合っているんじゃないかなと思います」

 渡邊はそう述べ、新天地のシステムが自身にフィットすることを強調していた。

 ナースHCは、もともとディフェンス指導に定評のあるコーチであり、チームリーダーのカイル・ラウリーも「今季は守備面で怪物的なチームになりたい」と明言している。そんなラプターズが求めているものと、献身的なディフェンスと多才さが武器である渡邊の長所は確かにマッチする。このチームの"一部"となったことで、渡邊のよさが自然と引き出された部分もあったに違いない。
 
 NBAの舞台に戻ってきた渡邊は、今後、さらに階段を上がっていけるのだろうか。ラプターズに能力を認められたことは確かでも、もちろんここがゴールではない。「再びスタートラインに立った」と形容するのが適切かもしれない。

 基本的にはGリーグ所属だが、一定期間、NBAでのプレーも可能になるのが2ウェイ契約。17人の枠に残った今、15人のアクティブロースターに定着するのが次のステップになる。その後、少しずつ信頼を得て、「ローテーション入り」や「本契約」といった目標に近づいていかなければならない。

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