「こんな終わり方はダメだ」。折茂武彦は引退撤回を最後まで悩んだ (5ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Kyodo News

「佐古はPG、司令塔の役割。チームを勝たせることが何よりも優先される。PGの優劣は残した数字以上にチームの勝敗によるところが大きい。でも、俺はスコアラー。スコアラーはチームを勝たせるだけでは評価されない。自分が点を取ってチームを勝利に導いて初めて評価される」

 だからこそ、折茂はコーナースリーを打つだけの今季の役割に満足できなかった。

「もちろん、より重い役割を任せてもらえなかったのは自分の力の足りなさが原因。ただ僕は27年間、コートに立ったら必ず勝負をしてきた。マークマンと駆け引きしてシュートチャンスを作って点を取ってきた。それが僕のスタイル。

 そして、それが応援してくださる人が僕に求めてきたことでもある。コーナーで待つのが自分の役割なのか。そうじゃないんじゃないか。スクリーンをひとつかけてもらえれば勝負できる。そこでシュートを外してベンチに下げられるならば納得もできる。ただ、勝負する機会を与えられないのは、チームから必要とされていないと感じてしまうこともあった」

 折茂は、コーナースリーに価値がないと言っているのではない。シューターがコーナーにポジションを取り、ディフェンスを引きつけチームメイトのためにスペースを生む。それこそまさに数字には現れない貢献の仕方だ。それでも――。

「僕が僕であり続けるためには、それじゃダメなんです」

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