「こんな終わり方はダメだ」。折茂武彦は引退撤回を最後まで悩んだ (4ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Kyodo News

 チームだけでなく、折茂自身も困難な状況に陥っていた。今季、折茂はオフェンス時にコーナーに立ち3Pシュートを狙う役割を主に担ったが、出場時間は平均7.17分、平均1.5点にとどまっていた。引退会見でも「初めて自信がなくなった。体力的な問題ではなく役割を含めて、プロと呼べるパフォーマンスを見せられなかった」と語っている。

 シーズン中、折茂は幾度となく戦友である佐古賢一に相談し、「チームに必要とされていないと感じる」と胸の内を吐露している。すると、佐古は言った。

「そんなことない。ファンの人もチームメイトも、お前をみんな見てる。それよりも、折茂が試合中ベンチにいる時、指定席みたいに一番端っこに座っているのはどうなのって思うよ。折茂がベンチの真ん中に座って、チームメイトのナイスプレーに立ち上がって喜んだら、それだけでチームも客席も勢いづく。それがチームってものじゃないのか。俺はどんな時もベンチの真ん中に座ってたよ」

 佐古のアドバイスに折茂は、「そうだな。でも、いきなりは不自然だから、一席ずつずれて真ん中に座るようにしてみるよ」と応えた。しかし、同時にすべてを受け入れることはできなかった。現役時代、良きライバルとしてしのぎを削り、日本代表では戦友だった2人のスターは、太陽と月の関係に似ている。「2人の役割は微妙に違う」と折茂は語る。

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