「こんな終わり方はダメだ」。折茂武彦は引退撤回を最後まで悩んだ (2ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Kyodo News

 神様は意地悪だ。

 折茂の27年に及ぶ現役生活が、どれだけバスケ界に貢献したかは計り知れない。そんなレジェンドのラストシーズン、用意されていたのは花道ではなく突然のピリオドだった。

 3月27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、Bリーグ大河正明チェアマン(当時)はレギュラーシーズンの残り試合、年間王者を争うチャンピオンシップなど、全試合の中止を発表。この瞬間、現役生活に終止符が打たれた。

 折茂はシュートタッチの確認のために、右手中指の爪を他の爪よりも4〜5ミリ伸ばしている。毎年、シーズン最終戦を終えると、ロッカールームでその爪を切ることを恒例としていた。

「区切りをつけるため、シーズンが終わった時点で爪を切るのが儀式のようになっていました。ただ、今季はチェアマンの発表があってもしばらくは、なんとなく爪を切れませんでしたね。不思議です。4月に入ってしばらくして、ようやく切ることができました」

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