不調のネッツに「アービング不要論」。エースの発言が批判を集める (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

「カイリーはエレベーターの中で『こんにちは』と声をかけても、何も答えないような男だ。昨季のセルティックスは期待を裏切ったが、チーム内の問題の85%はカイリーに起因するものだった」

 セルティックス戦のテレビ中継を担当するブロードキャスター、マイク・ゴーマン氏は今季の開幕直後、『スポーツ・イラストレイテッド』のポッドキャストでそう述べていた。

 ネッツに移籍した今季も、アービングに関する好意的ではない噂話はちらほら聞こえてきている。実力が確かなものがあっても、メンタル面で疑問符がつく。チームメイト、スタッフにとって、アービングが一緒に仕事をしやすい選手ではないことは事実なのだろう。

 昨季のセルティックスは優勝候補の一角に挙げられながら、プレーオフでミルウォーキー・バックスに惨敗した。これまで記してきたとおり、アービングを獲得した今季のネッツも苦戦中。とくにアービングが出場したゲームでは5勝11敗、出なかったゲームでは13勝14敗という数字も残っており、一時は"アービング不要論"すら囁かれた。

 もっとも、「アービングがいないほうがいい」と考えるのは、やはり飛躍しすぎている。アービングが勝利に貢献できる選手であることは、クリーブランド・キャバリアーズ時代の2014年に、レブロン・ジェームズとともにファイナル制覇を果たしたことでも証明済みだ。

 まだシーズンは折り返し地点を過ぎたばかり。ネッツの浮上に必要なことは、まず主力選手が健康を取り戻し、"ケミストリー"を養成すること。後半戦を通じ、ケニー・アトキンソンHCはチームのサポーティングキャストとアービングをうまく融合させなければならない。セルティックスの知将ブラッド・スティーブンスHCですら信頼関係を築けなかったスーパースターを、どう使いこなすかにかかっている。

「私はこのチームが大好きだ。まだ目指す場所にはたどり着けていないが、いずれ到達できるという自信がある。選手たちが健康を取り戻せば、みんなで向上していけるはずなんだ」

 アトキンソンHCのそんな言葉どおり、新体制のネッツはシーズン後半に上昇気流に乗っていけるのか。それともこのまま停滞し、デュラントが復帰するだろう来季を待たなければいけないのか。

 すべてのカギを握るのは、背番号11を背負った新たなエーススコアラー。どちらに転ぼうと、今季の後半戦、そして真の意味で勝負をかけることになる来季にかけて、アービングとネッツがどんな時間を過ごすのかに、大きな注目が集まりそうだ。

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