八村塁がNBAで示している適応力。最適な環境で能力はまだまだ伸びる (3ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 昨夏、日本が13年ぶりに出場したワールドカップで5戦全敗。世界の舞台から遠ざかっていた分、ほとんどのメンバーが初出場という中で痛烈な洗礼を浴びた。

 格上のトルコやチェコがしっかりと八村対策をしてきたのに対し、日本は八村が抑えられたときに突破口を開くことができなかった。そしてアメリカ戦では特別な策で抑えられたわけではなく、マンツーマンで4得点に封じられたことに、本人がいちばんNBA選手の力量を実感したことだろう。

 そもそも、日本代表としてやりたいスタイルを作り込んで世界の舞台に乗り込んでいったわけではない。ワールドカップに出てみてはじめてフリオ・ラマスHCは「今後、日本が一番にやらなくてはならないのはディフェンスの強化」との答えを得たのだ。

 そんな中で、たとえ対策を練られたとしても、八村が日本の大エースとなってリーダーシップを取らなければならないのが、男子バスケ界として44年ぶりとなるオリンピックの舞台だ。

 今、日本には八村がNBAに進出したことでバスケに興味を持った人々、そして八村に憧れる部活生たちが多い。現に後輩である明成高の部員には八村と同じく生まれに2つのルーツを持つ選手たちが「塁さんのようになりたい」と明成高への門を叩き、八村の名が全国区になった高校日本一を決定するウインターカップにて、下級生主体のチームながらベスト8と奮闘した。

 今や八村塁の存在は、日本人でもNBAで戦えるという勇気を与えているだけでなく、明日の八村塁を夢見る少年少女、逸材を育てたい指導者たちにも大きな影響を与えているのだ。八村が奮闘するかぎり、ファンは日本で、アメリカで、多角度な視点から、その成長をリアルタイムで追っていける楽しみがある。

 NBAと東京五輪で羽ばたく2020年が始まろうとしている。

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