八村塁がクールにNBAデビュー、即活躍。
「The Best Moment of My Life」

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by USA TODAY Sports/ Reuters/AFLO

 八村は好スタートを切ったが、ウィザーズは100-108でマーベリックスに敗れた。控えメンバーの頑張りで終盤に点差を詰めたものの、ルカ・ドンチッチ、ポルジンギスという2人のスーパースター候補を擁する相手に、内容的には完敗だった。

「試合に勝てなかったので、僕にも足りないところがいっぱいあったと思う。ビデオなどを見て反省して、次の試合に生かしたいと思います」

 八村はそう振り返っていたが、ウィザーズのチームとしての成熟度の低さは歴然だった。トロイ・ブラウン・ジュニア、CJ・マイルズ、アイザイア・トーマスといった主力が離脱したことで、コマ不足は明白。とくに控えメンバーの層の薄さはいかんともし難く、しばらく厳しい戦いが続きそうな予感が色濃く漂っている。

 ただ、これは入団当初から言われていることだが、こういった環境は八村にとって悪いものではない。10月25日にオクラホマシティ・サンダー戦、10月27日にはサンアントニオ・スパーズ戦と、今週末は敵地でのゲームが続くが、そこでも八村が主力扱いを受けることは確実だ。そして何より心強いのは、いきなり重要な立場で起用されても、21歳の日本人ルーキーがナーバスになっているようには見えないことだ。

「あまり緊張はしなかったです。プレシーズンも経験したし、練習でやっていたとおりに試合に入れたと思うので、そういう部分で緊張しなかったんじゃないかなと思います」

 これほどのビッグステージでまったく緊張がないとは信じ難いが、実際にこの日の八村はミッドレンジのプルアップ、オフェンシブリバウンドといった自らの武器を生かせていた。ドライブでゴールに持ち込んだ際、3本のブロックを浴びたのは反省点ではあるが、それも流れのなかで積極的に攻めた結果だ。そうした普段どおりに思えるプレーができたことは、残した数字と同様に、いや、数字以上に評価されていいのではないか。

「塁は私が考えていたとおりのプレーをしてくれた」

 試合後のスコット・ブルックスHCはそう述べていたが、同じようにプレーできない夜はこれからたくさんあるだろう。生き馬の目を抜くようなNBAで、ルーキーにアップダウンがあるのは当然だ。

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