八村塁が開幕スタメン濃厚。期待以上の出来とバスケIQの高さも示した (2ページ目)

  • 杉浦大介●取材・文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

 徐々に階段を上っていった八村を、NBAの某スカウトも高評価していた。

「コーチに指導されたことを消化し、システムの中で堅実に動いている。サマーリーグの時と比べると、攻守両面でプレーに安定感がある。持ち前のバネ、フィジカルの強さに加え、『NBAのレベルでも短期間に戦術が理解できる』ことを示せたのは大きい。プレシーズンの4戦で、バスケットボールIQの高さを示したと言えるのではないか」

 筆者は、10月7日の試合を除くプレシーズンの3戦を現場取材したが、このスカウトと似たような感想を抱いた。今ではチームのシステムを理解してスムーズに動いており、サマーリーグ中に随所に見受けられた、コート上で所在なげに佇むシーンはほとんどなくなった。セルティックス戦でアル・ホーフォード、トバイアス・ハリスといった実績あるスター選手とマッチアップした際も、普段どおりに落ち着いて見えたのは心強い。

 個人成績はサマーリーグのほうがよかったが、プレーの質はプレシーズン戦のほうが上だろう。「スター候補」と呼べるほどの派手さはないが、ルーキーながら堅実なプレーができる。層の薄いチーム内で、すぐに長いプレー時間を得ることも可能だろう。周囲の評価も少しずつ上がっており、最近では今季の新人王争いのダークホースに挙げる声も出てきている。

 もちろんすべてが順風満帆だったわけではなく、前記のスカウトは課題が少なからず残っていることもつけ加えていた。

「シュートフォームは改善しているが、ロングシュートはまだフラットになりがち。今季は、シュートがなかなか決まらずに苦しむゲームが多くなるだろう。ディフェンス面では、ウィングスパン(両腕を広げた幅)とジャンプ力を生かしてハイライトを生み出している。それでも、NBAの強靭なPF(パワーフォワード)とマッチアップし、1試合を通じてしっかりガードできるかどうかは、これから証明しなければいけない」

 実際に、10月13日のバックス戦ではFG(フィールドゴール)が4/13とシュートが決まらず、とくにフリースローは1/8と信じがたいほどの低調ぶりだった。ジャンプシュートの軌道がフラットになりがちなことへの懸念は、バックス戦の前から囁(ささや)かれはじめていた。この日はリバウンドで貢献し、シュートタッチの悪さをカバーしたが、レギュラーシーズンでは同じようにいかないゲームもあるかもしれない。

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