涙とともに成長した渡邊雄太。
W杯の教訓は「プレッシャーに勝つこと」

  • 小永吉陽子●取材・文 text by Konagayoshi Yoko
  • 加藤誠夫●写真 photo by Kato Yoshio

 こうしたプレーを率先して発揮することは、国際大会を戦った選手たちがよく課題とする「日本に経験を持ち帰って伝える」と同様な姿勢だ。渡邊がNBAで戦う強度を発揮したことにより「Bリーグの選手たちから変わらなければ」(竹内譲次/PF/アルバルク東京)と国内で戦う選手たちの決意も変わっている。今度はBリーグの選手たちがW杯で経験したプレーを国内に伝えていかなくてはならない。

「このW杯は自分にとって何をもたらし、今後にどうつなげていくのか」と、すべての試合を終えたあとに渡邊に聞いてみた。

「自分自身、今回はバスケ人生で初めてプレッシャーに負けて、自分の精神的な弱さを感じました。正直、1次ラウンドは突破しなければならないと自分自身にプレッシャーをかけていたので、チェコに負けたあとは(その望みがなくなったことにより)自分を見失ったというか、全然自分を出せなかったです。今後、NBAでプレーすることになってもそういう状態が絶対にある中で、そのプレッシャーに勝っていくことは、この代表期間を通して学べたことです」

 W杯での日本は結果を残せず、個々のスキルアップにしろ、チーム力構築にしろ、やるべきことは山積みだ。ただ、次に何をつなげられるかで、13年ぶりのW杯の戦いは無駄にならず、戦った価値は出てくる。すでに渡邊は、「今年は本契約をつかみにいく」と誓ってアメリカへと渡った。頭の中には東京五輪を見据えた思いは当然あるが、今はグリズリーズで評価を上げることが、自分自身のやるべきことだ。このW杯の経験が渡邊を一回りたくましくさせたことは間違いなく、これからも、目の前の試練を一つひとつ乗り越えて進んでくれるはずだ。

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