渡邊雄太がNBAで生きる道。
今季で自信は得た。来季の課題も明確だ

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

 一方で、Gリーグのメンフィス・ハッスルでは主力として活躍し、平均14.2得点、7.2リバウンド、2.6アシスト、1.1ブロックという好成績をマーク。シーズン終盤の5連勝に大きく貢献するなど、ハッスルのプレーオフ進出の立役者となった。さまざまな形でアピールを続け、シーズン最後までNBAのロースターに名を連ねたことは特筆に値する。

 普段は謙虚な受け答えが多い渡邊だが、4月10日のウォリアーズ戦後には力を込めてこう語った。

「アメリカに来る前にいろいろ反対もされましたし、『NBA選手になりたい』と日本を飛び出てからも、『無理だ』『アメリカでは通用しない』といろんな人に言われました。それでも今シーズン、納得がいく出来ではなかったんですけど、こうしてNBA選手としてシーズンを終え、今ここに座っている自分を誇りに思います」

 群雄割拠のNBAで1シーズンをサバイブしたことで手応えを感じたのだろう。2004年にフェニックス・サンズと契約し、日本人NBAプレーヤーの第1号となった田臥勇太は、NBAでは4試合の出場で解雇されている。その偉大なる一歩は讃えられるべきだが、渡邊は田臥の成績をほぼすべてのカテゴリーで上回り、シーズンを最後まで戦い抜いた。渡邊がアメリカの大地で大きな足跡を刻んだことに疑問の余地はない。

 ただ、渡邊の挑戦がゴールを迎えたわけではないし、現時点で"成功"と言い切るべきではあるまい。確かに1年間を戦い抜いたが、グリズリーズで出場したのは82戦中15戦のみ。選手登録されてベンチに入っても、プレーできない時間のほうが長かった。

「コートに立てたときは、どんな状況でも気持ちが高ぶります。しかしNBAではベンチで見ている時間が長かった。やっぱり自分も、試合に出て活躍したいという気持ちが当然ありました」

 アスリートにとって何よりつらいのは、活躍できないことではなく、力を出す機会を得られないこと。これまでのキャリアの多くを、チームの主力として活躍してきた渡邊にとって、今季は悔しい思いをした1年でもあったはずだ。

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