渡邊雄太がNBAで生きる道。
今季で自信は得た。来季の課題も明確だ

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by AP/AFLO

「好きな選手はケビン・デュラントです。NBAの中では彼は細いほうですが、それでも体が強くて、シュート力、得点能力が高いのが魅力ですね」 

 ジョージ・ワシントン大学時代の渡邊雄太に「好きなNBA選手は?」と聞くと、決まってそんな答えが返ってきた。NBAでの1年目のシーズン最終戦で、その憧れの選手とマッチアップしたことは"運命的"とも言えるかもしれない。

 現地時間4月10日、渡邊が所属するメンフィス・グリズリーズは、今季最後のゲームでNBA3連覇を狙うゴールデンステイト・ウォリアーズと対戦した。渡邊は19分10秒プレーし、4得点、4リバウンドでグリズリーズの勝利(132-117)に貢献。最初はシュートが決まらずに苦しんだものの、最終クォーターには2本のシュートを沈めた。

ウォリアーズ戦でデュラント(右)とマッチアップした渡邊(左)ウォリアーズ戦でデュラント(右)とマッチアップした渡邊(左) しかし、試合後の渡邊に満足した様子はなかった。デュラントについて尋ねても、同じコートでプレーした感慨を語るのではなく、ガードした際にファウルを"奪われた"プレーを冷静かつ的確に分析した。

「ポストアップされて、自分が一瞬、彼の腰に手を置いたんです。そこで案の定、簡単に引っかけられてファウルを取られてしまった。本当に悔しいプレーのひとつです。ああいう技術というか、簡単にファウルを取って、得点につなげる力もすごいなと思います。

 当然ですけど、今の自分では彼にまったく歯が立たない。そんな中で今後、どれだけ成長して、ああいう選手を相手にどこまで対抗できるようになるか。これからのオフシーズンがすごく大事になると思っています」

 NBAで1年を過ごした渡邊にとって、デュラントは単なる憧れではなくなった。もちろん、まだ"ライバル"と呼べるレベルではないが、"倒すべき対戦相手"になった。そんなところからも、渡邊の立場の変化と心身両面の成長が感じられる。

 グリズリーズと2ウェイ契約(注)を結んで臨んだプロでの1年目は、激しく、慌ただしく、そして充実したシーズンになった。昨年10月27日のフェニックス・サンズ戦に出場し、日本人史上2人目のNBA選手になった。2月5日のミネソタ・ティンバーウルブズ戦では両親の前でプレー。その2日後のオクラホマシティ・サンダー戦では、自身初の10得点をマークした。

(注)2ウェイ契約は昨季から採用された新制度。基本はNBAチーム傘下のGリーグチームでプレーするが、1シーズンに45日間だけNBAでロースター登録が許される。各チームは2人と2ウェイ契約を結ぶことできる。これによってロースターに登録できる選手数は15人から17人になった。

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