トレード期限ギリギリまで駆け引き。NBA各チームに例年以上の動き (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Getty Images

 さらにラプターズは控え3選手を放出したため、ベンチ層がかなり薄い。ただ、そんなリスクを背負ってでも勝負に出たのには理由がある。今オフにFAとなるカワイ・レナード(SF)を引き止めるためには、カンファレンス制覇が大きな材料となると考えているからだろう。バックスと同様に、ラプターズも今季にかける思いは強い。

 また、現在イースタン5位のフィラデルフィア・76ersもトレードで勝負に出た。3選手に加えて、ドラフト1巡目指名権ふたつと2順目指名権ふたつを交換条件に、ロサンゼルス・クリッパーズ(ウェスタン9位)からエースのトバイアス・ハリス(SF)を獲得したのだ。

 ハリスは平均20.8得点・スリーポイントシュート成功率43.7%を誇り、まさに76ersに欠けていたシューターだ。ディエンスも得意なので、76ersの戦力が大幅にアップしたのは間違いない。このトレードよって76ersのスターターはベン・シモンズ(PG)、J・J・レディック(SG)、ジミー・バトラー(SG)、ハリス、ジョエル・エンビード(C)という、リーグ屈指の豪華ラインナップとなった。

 対して、イースタン4位のボストン・セルティックスはトレード・デッドラインを静観していた。ただ、結果的にはトレード勝ち組に分類されるだろう。

 そのキーワードとなるのが、ペリカンズのアンソニー・デイビス(PF)。今回のトレード・デッドライン内でもっとも去就が注目されていたオールスター選手だ。

 リーグ屈指の実力を誇るデイビスの獲得を、セルティックスも狙っていた。だが、NBAのルール上、今シーズン中はデイビスとカイリー・アービング(PG)を同時にロスターに並べることができない。セルイティックスがデイビスを獲得するなら、7月まで待たなくてはいけない状況だった(※)

※通常ルーキーと契約した後の再契約は、チームサラリーキャップの25%がMAX契約となる。しかし、「MVP受賞」「2度のオールNBAチーム選出」「2度のオールスターゲーム・スターター出場」などの特定の条件を満たした選手のみ、30%のMAX契約を認める「デリック・ローズ・ルール」が適用される。これらの条件を満たしている「特定選手」の保有は1チーム1名と決められており、アービングとデイビスはこの特定選手に該当するため、現状では同じチームでプレーできない。ただ、特定選手の適用期間が今オフで終了するため、2020年7月1日以降はデイビス獲得に動くことができる。

 当初、デイビス獲得の最有力と目されていたのは、ウェスタン10位のロサンゼルス・レイカーズだった。だが、多くの若手と複数のドラフト指名権を提示したものの、交渉は失敗に終わった。その結果、デイビスはペリカンズに残留することに。来季、デイビスとアービングがチームメイトとなっている可能性は大いにある。

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