4連敗→6連勝。ウイング3人の成長が日本バスケの可能性を広げる (3ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 迎えたWindow5では、田中にとって代表戦におけるターニングポイントになりそうな場面が訪れた。司令塔の富樫勇樹が右足首を捻挫、篠山のファウルトラブルにより、後半にポイントガード(以下PG)を務めることになったのだ。アルバルクでもそうだが、田中はピック&ロールを仕掛けるときはボールハンドラーになることが多い。自身も「ゲームの起点になることはアルバルクと同じ役割だから、今回も余裕が出てきたんだと思います」と、仕事をやり切ったことに安堵の表情を見せた。

 そして田中同様、どうしても代表で結果を出したかった選手がいた。今季からオーストラリアリーグに参戦している比江島慎だ。

 オーストラリアの所属チーム、ブリスベン・ブレッツで比江島は、「正直なところ、もっと試合に出られるかと思っていた」と、開幕からほとんどコートに立つことができていない。明らかに足りないのは語学力であり「コミュニケーション不足」(比江島)だと痛感している。

 加えて「ブレッツでは点を取ることもそうですけど、PGをやることも求められている」という状況では、日本代表で色んなことがやれることを再度アピールする必要があった。「ブリスベンのコーチには『Window5でやって来い!』と言われているので、ここで自信を取り戻したい」との覚悟で臨んでいた。

 比江島が真価を発揮したのはカザフスタン戦の後半だ。14点、4リバウンド、2アシストのスタッツを叩き出し、苦境において何でもこなすエースぶりを見せつけることができた。

 ブレッツでは司令塔になることも求められていると言うが、だからといって、日本で点取り屋の比江島が現状PGを任される機会はない。だが田中同様、比江島も周囲を生かすことができ、今回でいえばファジーカスを使ったピック&ロールは機能していた。2人とも2014~2016年の長谷川ジャパン時代はPGを経験したこともある。だが当時は、スピードアップする中でのボールプッシュを課題とし、ゲームメイクに専念するあまり、リバウンドに入るのを忘れてしまうことを指摘されていた。

 今回、アクシデントによりPGを務めた田中は、以前よりは速い展開作りができていた。だが、もっとディフェンスプレッシャーの強い国を前にしてスムーズにやれるかといえば「まだ形だけのPGだと思う」と本人の採点は辛い。

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