恐竜か一角獣。NBAドラフト1位216cmの恐るべき潜在能力 (2ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

 エイトンは、当時のことをこう振り返る。

「よく笑われていた。泣いたこともあった。ハードワークが大変だったんだ。うまくなるのがそんなに大変だとは知らなかった。でも、あきらめたくなくて泣いた。両親のことを考え、失敗したくなかった。自分に与えられた機会が当たり前だと思ったことはなかった」

 高校に進学するころには、誰もエイトンをTFNと呼ぶことはなくなっていた。むしろ、エイトン自身、サイズや身体能力を使えば周りを圧倒できてしまうことを、物足りなく感じ始めてもいた。

「高校でプレーするのはあまり好きではなかったんだ。退屈していた、とまでは言わないけれど、よく手を抜いたりしていた。相手の力にあわせてしまっていた。そこまで興味がなかった。大学に行くこと(大学からリクルートされること)だけを考えていた」

 身体能力だけで周りを圧倒できるゲームは、一見、何でもできて楽しそうに思えるかもしれないが、実のところ、競争心の強い彼らにとってはまったく楽しくない。もっと高いレベルでの競争をするためには、大学、そしてNBAと進むまで、時間が流れるのを待つしかなかった。

 10月17日、ダラス・マーベリックスとのホームゲームが、エイトンにとってNBAデビュー戦だった。相手には、ドラフト3位で指名されたスロベニア人ルーキー、ルカ・ドンチッチもいた。マッチアップはオールスター・センターのデアンドレ・ジョーダン。

 試合が始まって30秒もたたないうちに、エイトンはプロ1本目のリバウンドを奪取。その直後に、ドンチッチにファウルされながらレイアップを決め、フリースローも沈めた。その後も、ジャンプシュートやフックシュートなど、多彩な攻撃力を見せた。

 もちろん、うまくいったことばかりではない。ヘルプに少し気を取られた瞬間にジョーダンにダンクを決められた場面もあった。それでも、エイトンは36分半の出場時間で18得点・10リバウンド・6アシストと活躍し、サンズは121−100で快勝した。

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