渡邊雄太と八村塁が挑んだ11日間。2人の融合で崖っぷちから前進 (2ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayosi Yoko

 6月末から7月にかけて行なわれた1次予選のWindow3では、八村と帰化選手のニック・ファジーカスの加入でインサイドが強化され、FIBA(国際バスケットボール連盟)ランキング10位のオーストラリアを撃破する原動力となった。今回、渡邊と八村の融合は、ファジーカスの合流とはまた違った魅力を表現していた。2人の加入は日本にどんな化学変化を与えたのだろうか。

 一番の変化はオフェンスのテンポが速くなったことだ。206cmの渡邊と203cmの八村はサイズがありながらも、リバウンドを取ってみずからボールプッシュをして走れる選手。2人のゴールアタックの応酬には「自分が打開してやる」という強い意志と積極性が見えた。2人のドリブルプッシュを起点にして状況を打破できるようになったことは、今までパスを回してばかりでフィニッシュの形を戸惑っていた日本のバスケと比べると大きく異なる。

 2013年と2016年に代表参戦歴のある渡邊は、過去の日本代表と比べ「日本は強くなっている」と発言したが、その理由を「速攻が多くなった」と語る。それは数字にも現れており、八村加入前の4試合は速攻による得点は平均10.5点。八村とファジーカスが加入した2試合は16.5点。渡邊と八村が参戦した2試合は18点と上昇。速攻からの豪快なダンクが何度も飛び出していた。

 また、光っていたのが2人の対応力から導かれるチーム全体の底上げだ。初戦のカザフスタン戦では渡邊と八村の打開力に頼ってしまい、オフェンスが停滞した時間帯があったが、イラン戦では時間の経過とともに、竹内譲次のリバウンドや田中大貴のカバーリングディフェンスをはじめ、個々の役割の明確化が進んでいた。

 Window4のヤマ場は何と言っても、アジア2位の実力を誇る強豪イラン戦。FIBA公式戦で13年も勝てていなかったイランを撃破できたのは、相手が核となるベテラン選手2名を欠いていたことも一因にはあるが、日本もまた、渡邊と八村が合流したばかりの即席チームである。それでも2人が力を発揮できたことに、彼らが置かれている環境の厳しさやレベルの高さ、成長の早さを日本中のファンが知ることになった。

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