アフリカ→日本→NBAと歩んだ男が、「レフェリー殴打事件」に思うこと (5ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

――しっかりとした英語が話せる人は学校にどれくらいいたんですか? 

「どんな学校にもイングリッシュ・スピーカーは必ずいる。岡山学芸館高校は留学生が多かったから、英語の先生以外にも英語を話せる教師が4人もいた。ただ、だからといって、その人たちが留学生と簡単に心を通わせられるわけではない。僕はセネガルで英語を勉強しておいたからよかったけど、他の留学生たちは必ずしもそうじゃない。セネガルの人々はふだんフランス語を話すからね」

――留学生が授業にほとんど出ず、スポーツだけしていても黙認する学校があるという噂もあります。それを耳にしたことはありますか? 

「その噂は僕も聞いたことがあるけど、本当かどうかはわからない。僕が話せるのは僕が通った学校のことだけ。僕は最初の6カ月、日本語を勉強するクラスを受講した。その後は他の日本人の部員たちと同じクラスに入り、普通に授業を受けた。内容によっては理解できず、難しいクラスも多かったけど、とにかく岡山学芸館高校ではみんながそうやって授業を受けた。コンピューターの授業は大丈夫だったけど、歴史のクラスは難しかったな。宿題をやるのも大変だった」

――冒頭で話があったように、今回の事件がポジティブな変化を生み出すことを期待したいですね。

「僕は日本では本当に素晴らしい経験ができて、知り合った仲間たちは今でも"従兄弟"のような存在だ。セネガル人と日本人だってそんな関係になれる。僕は日本のカルチャーを学び、おかげで日本という国は僕をより良い人間にしてくれた。肌の色は関係なく、みんな同じ人間なんだ。

 重要なのは理解し合うこと。実際に話し、触れ合うことで物事はいい方向に進んでいくと信じている。そして、バスケットボールは多くの国の人々を結びつけることができるはずなんだ。僕は日本が本当に大好きで、来年の夏には日本でバスケットボール・キャンプを開催しようと計画しているくらい。だからこそ、日本の留学生がより暮らしやすい環境に恵まれることを、心から願っているよ」

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