アフリカ→日本→NBAと歩んだ男が、「レフェリー殴打事件」に思うこと (3ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

――私がニューヨークで生活し始めた当初もホームステイで、朝晩の食事はホストファミリーと共にしました。確かに、特に10代の生徒にとっては、ホームステイのほうが生活環境としてはベターなのかもしれませんね。

「ホームステイではほとんど家族の一員になるわけだから、その国のカルチャーに触れる機会が増える。本当の両親ではなくとも、大人のケアを受けることで家族になったように過ごせる。守られていて、安全に感じられる。繰り返すけど、岡山では僕の周囲の人たちがベストを尽くしてくれた。それでも、より家族的なケアを受けることを望む子どもたちも間違いなく存在すると思う」

――ホームステイ以外に、受け入れる側の学校が準備しておくべきことはありますか? 

「最初のステップとして、受け入れる側が学生のバックグラウンドをもう少し知っておくべきだと思う。留学生がクラスでひとりでいたとしても、彼はクラスメイトのことが嫌いなわけではないから、日本の生徒たちも歩み寄ってほしい。違う国の人間だとしても、共通点やわかり合える部分は必ずある。最初は円滑ではなくても、コミュニケーションを取り続けることでそれが見えてくる。留学生は日本について学び、受け入れる側もその生徒の国について学ぶことで、支え合えるようになるんだ」 

――日本には、依然として閉鎖的な部分が残っていると。

「日本は世界でも有数の外国人が多く訪れる国だというのに、海外のことを学んだり、理解しようとしない人が多いことは残念に感じた。僕の高校時代もみんなセネガルのことを知らなかったから、驚くほどバカげた質問を頻繁にされたよ」

――具体的にはどんな質問をされたんですか? 

「たとえば、『アフリカでは、ジャングルで野生動物に囲まれて暮らしていたの?』とか、『セネガルに帰ったら、今着ているユニフォームをそのまま私服にするの?』とか。みんなセネガルがどんな国か知らず、ひどく貧しくて、食べるものも着るものもないという固定観念があったんだろうね。最初は腹が立ったけど、彼らは差別をしているのではなく、ただ知識がないだけだとすぐに気づいた。『アフリカは貧しい』というステレオタイプのせいなんだろうね」

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