「ギリシアの怪物」アデトクンボはNBAプレーオフでも大暴れするか (2ページ目)

  • 杉浦大介●文 text by Sugiura Daisuke
  • photo by Getty Images

「(ここまでの自身の軌跡は、)自分で想像できた範囲を上回っているよ。NBAには到達できるかもしれないとは思っていたけど、23歳にしてオールスターに2回も出て、MVP 候補に挙げられて、チームを背負って立てるなんて思ってもみなかった」

 アデトクンボはそんな殊勝なコメントを残してはいたが、"グリーク・フリーク(ギリシャの怪物)"という愛称で呼ばれる彼がいないNBAオールスターなど、もはや考えにくい。それだけの実績を残してきたのはもちろん、アデトクンボの最も素晴らしいところは、そのプレーにこれまで誰も見たことがないようなオリジナリティとスケールの大きさが感じられることだ。

 身長211cmの長身ながら、パワー、バネ、ポイントガード(PG)が務まるほどのスキルを兼ね備えている。カモシカのような足でコートを縦横無尽に駆け回り、約224cmのウィングスパンを生かした豪快なダンク、ブロックでファンを魅了する。

 NBAのシーズン中は、アメリカのスポーツ専門テレビ局『ESPN』のニュースで、アデトクンボのハイライトシーンを見ない日はほとんどないようにも感じられる。一方で、彼はナイジェリアからギリシャに渡った移民の息子であり、そのステイタスゆえ、プロ入りの際には「一悶着あった」という話も興味深い。

「3つの国をまたぐライフストーリー」「ユニークなプレースタイル」「特徴のあるルックス」という要素が相まって、アデトクンボは存在自体がどこかフィクションのような趣(おもむき)を醸し出している。今年度のオールスターファン投票でもイースタン・カンファレンスでレブロンに次ぐ2位に入ったほどの人気は、そんなバックグラウンドの影響も受けているのだろう。

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