這い上がれ、日本男子バスケ。W杯予選で連敗スタートからのイバラ道 (2ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 選手たちがフィリピンに対し「勝てた試合だった」というのは分析が甘すぎる。「やられてはいけない時間に、やられてはいけない選手(ウィリアム)にやられた」(比江島)のだから、勝利を手繰り寄せるだけの力は及んでいない。オーストラリアに対して33分間、食らいつけたことは前進に見えたが、2試合を終え、代表強化を統括する東野智弥技術委員長は「集中力も出てきたし、進歩はしている。でもまだチーム力が浅い」という言葉で現状を示した。勝負どころで自ペースに持っていく両国の成熟度を前にして、日本のバスケはまだ若い、と言わざるを得ない。

 日本は何が足りないのだろうか。格上の相手から見せつけられた執念がその答えを示していた。この2連戦でこんなシーンがあった。

 フィリピンは、残り1分を切って勝利を目前とした中で、ビンセント・レイエスHCが悔しそうに脚を蹴り上げた。8点差で勝っていたにも関わらず、残り0.2秒で日本にボールを奪われたうえに、フリースローまで与えた終わり方に納得がいかず、指揮官は激高したのだ。そして残り0.2秒のタイムアップ寸前に作戦タイムを請求。順位がもつれた場合は得失点差が関係してくるだけに、もうワンプレーで得点を取るためのものだった。

 フィリピンはバスケットボールを国技としている。プロリーグのファイナルに5万人以上の観客を集める熱狂ぶりは、世界有数のバスケ大国といっていい。ワールドカップに絶対に出なければならない使命と、国民の期待を背負っている重圧が感じられたシーンだった。

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