NBA「パウvsマーク」のガソル兄弟対決。胸に去来する複雑な想い (4ページ目)

  • 宮地陽子●取材・文 text by Miyaji Yoko
  • photo by AFLO

 一方、32歳のマークは選手として全盛期。まぎれもなくグリズリーズの中心選手のひとりとしてチームを率いている。かつて兄が7年近く所属していたグリズリーズは、マークにとってもNBAへの入り口であり、そしてNBAキャリアのすべてだった。今季でチーム在籍期間9シーズン目と、いつの間にかパウより長くグリズリーズのユニフォームを着ている。

 それでも、まだマークがパウに追いつけないものがある。NBA優勝だ。パウはロサンゼルス・レイカーズ時代に2度の優勝を経験しているが、マークはもっとも勝ち進んだ4年前でもカンファレンス・ファイナル止まり。NBA優勝という目標を果たすためには、まずは目の前にいる兄のチームを倒さなくてはいけなかった。

 シリーズ第4戦。オーバータイムの熱戦を決し、2勝2敗のタイへと持ち込んだのは、残り0.7秒でマークが沈めたシュートだった。

 このときベンチに下がっていたパウは、試合後に弟のシュートについて聞かれると、あまり表情を変えることなく、冷静に「すごいシュートだった。難しいシュートをよく決めた。それは彼を誉めるしかない」と称賛した。弟が活躍して誇らしい一方で、それが自分たちの負けにつながるのは悔しい。複雑な思いだった。

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