メダルはなくても。日本女子バスケがリオで見せた「夢のような」輝き (3ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by JMPA

 大会を通して、吉田は少しの隙間も見逃さず、針の穴を通すような正確なパスをチームメイトに配給し続けた。まさに彼女が、全身に血液を送り続けるチームの心臓だった。

 オフェンスが苦しい場面でボールを託されるのが渡嘉敷。渡嘉敷は、自身より10センチ以上高いマークマンを背負いながらも怯まず1on1を挑み続けた。例えシュートが外れても、「渡嘉敷が外したのなら」と納得の表情でチームメイトはディフェンスに戻る。渡嘉敷は、チームのエースであり、アカツキファイブのハートだった。

 実況する海外の解説者は、日本の得点が決まると、しきりに「ビューティフォー!」「マグニフェシェント!(お見事!)」を連呼。日本のオフェンスは、世界で最も美しかったと言っても過言ではないだろう。

 ただし、その美しさは、ガラス細工のような繊細さの上に成り立つ美しさだった。何かたったひとつでも歯車が狂えば、あっという間に日本のリズムは消えてしまう。アカツキファイブは、どんな強豪国と戦っても勝つ可能性を持ち、同時に、それと同じだけ大敗の危険性を持ったチームだった。

 それを、今大会の戦績が物語っている。予選ラウンド初戦のベラルーシ(世界ランク10位)戦、第2戦のブラジル(世界ランク7位)戦は、集中力が途切れることなく試合を展開し連勝。

3 / 6

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る