【国内バスケ】選手兼社長となった折茂武彦が「初めて頭を下げた日」 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

 果たして、前例のない無謀とも思える挑戦に、勝算はあったのか?

「あるかないかで言ったら、ないです。経営者的な経験はゼロ。バスケットしかやってきていない素人が、いきなり運営サイドに回るわけですから。特に最初の3ヶ月くらいは、自分が何をやっているのか、ほとんどわからない状態で......。忙しさと重圧のせいか、当時の記憶がほとんどないんですよね」

 折茂は、名刺の渡し方から始まり、ビジネスマナーを慌ただしく習った。「それまで、人に頭を下げることなんてなかった」という男は、スポンサー探しのため、何百、何千と頭を下げ、北海道中を奔走した。

 もちろん、営業の後は、選手としてのトレーニングもこなす。そして、営業以上にきつかったのが、「チームメイトとの関係だった」と振り返る。

「『北海道のために』と、残ってくれた選手が大勢いたんです。『折茂さんがやるなら』と、ついてきてくれた選手もいた。しかし、銀行がお金を貸してくれるわけでもなければ、新たなスポンサーもなかなか見つからない。理事会で、『今月の選手の給料はどうしよう。このままじゃ払えない』って話し合いをしながら、直後に僕は選手と一緒に練習をする。『明日は給料日だ!』って喜んでいるみんなの姿を目の当たりにするわけです。

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