【国内バスケ】若かりし折茂武彦。「ファンを完全にシカトしてた」 (3ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

 ただ、その傲慢とは裏腹に、自身のプレーに関しては、当時からどこまでも謙虚だった。「なぜあなただけ、これほど長くプレーを続けられるのか?」と聞くと、少しの沈黙の後、こう教えてくれた。

「たぶん、能力がないからじゃないですか」

 日本バスケ史にその名が刻まれる選手が、「能力がない」はずはない。低すぎる自己評価は、多分に謙遜を含んだ発言かと思いきや、本人はいたって本気だった。

「僕には、特出したスキルは"ない"に等しいんですよ、正直。ドリブルやパスが抜群にうまいわけじゃない。それこそ学生時代から、チームメイトとイッセーノーで走ったら負けるし、跳んでも負ける。スキルも身体能力も高くはない。じゃあ、どうやってその能力不足を補うか。それはもう、ひたすら考えるしかないんです。『どうしたら生き残れるか?』って考え続けるしかない」

 たどり着いた答えのひとつは、味方選手に自身のマークマンをぶつけてスペースを生み出す、スクリーンの使い方だった。

「シュートを打つために1秒はいらない。コンマ何秒かだけノーマークが作れればいい。スピード、タイミング、角度、スクリーンをどう使うか......ずーっと、ずーっと試行錯誤を繰り返したんです。もちろん、今でも考えます。相手も対策を考えてくるんで、さらにそのディフェンスを引き剥がすには、どうしたらいいか考え続けるんです」

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