【国内バスケ】若かりし折茂武彦。「ファンを完全にシカトしてた」 (2ページ目)

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

「いい服を着て、いいクルマに乗って、いい姉ちゃんを引き連れ、サッカー選手、野球選手がガンガン飲んでるわけですよ。日本では野球、サッカーと比べたら、たしかにバスケットはマイナースポーツかもしれない。でも、負けたくなかった。バスケが競技として劣るとは思わないし、バスケ選手だって同じように稼げるって証明したかった。『見てろ。俺が証明してやるから』って。トップ選手が稼げない競技なんて、若い子は憧れないですよね?」

 入団当初、当時は2部制で、入れ替え戦ギリギリだったトヨタ自動車を、優勝争いの常連に変貌させたのが折茂だった。

「毎年、チームと交渉できるだけの成績を残して、『これだけの数字を残したんだから』と、年俸アップを要求したんです。年俸をドンドン、ドンドン上げていった。バスケ界では破格だったと思います。いいクルマにも乗ったし、いい服も着て、後輩には『バスケット選手だって稼げるんだ。お前もがんばれ』ってケツを叩いて」

 勝つことだけ、自身とチームの成績を上げることだけに集中した、あの日々に後悔はない――。ただ、小さな"トゲ"のようなものが、その胸にはいまだに刺さっている。

「今なら考えられないんですが、ファンにサインを求められても、完全にシカトしてましたからね。最近、知り合いに言われたんです。『あのころは、話しかけちゃいけないんだって思ってました』って」

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