【国内バスケ】折茂武彦、46歳。
「北海道だから現役でがんばれる」

  • 水野光博●取材・文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

 ロッカールームからコートに出ると、折茂の眼前に広がったのは、試合開始を今や遅しと待ちわびる、3000人を超す満員の観客だった。

「競技人生で、何百、何千試合経験したかわかりません。でも、あの開幕戦だけは、絶対に忘れられない。トヨタ時代、レギュラーシーズンにこんな大勢の観客がいたことはなかったですし、そもそも観客はまばらで、ホームもアウェーも感じたことはなかった。それが、北海道ではこんなに多くの人たちが応援してくれる。今まで僕は、バスケを自分のため以外にがんばったことなんてなかった。満員の客席を見たとき、初めて思ったんです。『この人たちのために、がんばらなきゃダメだ』って」

 コート上では、顔色ひとつ変えずに1試合で何十点も稼ぎ出す男が、少し照れくさそうに言った。

「これだけ長く現役を続けられるのは、北海道だからです。移籍したのが北海道でなければ、とっくに引退していた。ありきたりの言葉になってしまうんですが、人って、やっぱり必要とされるとがんばれるんです。ファンが僕をまだ必要としてくれる。だから、この年齢でもやれているんだと思います」

 今秋9月22日に開幕するBリーグ。レバンガ北海道の初戦は、9月24日の大阪エヴェッサ戦。46歳の折茂武彦にとって、24度目のシーズンが幕を開ける。客寄せではなく、もちろんレバンガ北海道の戦力として――。

(第2章に続く)

【profile】
折茂武彦(おりも・たけひこ)
1970年5月14日生まれ、埼玉県出身。レバンガ北海道所属。埼玉栄高校から日本大学へと進学し、1993年にトヨタ自動車に入社。2007年、新設されたレラカムイ北海道に移籍するも、運営会社の撤退などにより新チーム「レバンガ北海道」を自ら創設。国内プロ団体球技で異例の「選手兼オーナー」となる。日本代表としては1994年・広島アジア大会や1998年・世界選手権など数々の国際大会を経験し、正確なスリーポイントシュートは現在も国内トップレベル。シューティングガード。190cm・77kg。

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