ナイキがジョーダンを超える
「生涯契約」をレブロンと結んだ裏事情

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by AFLO

(9)相思相愛なレブロンとナイキ。ついにジョーダンを超えた?

 昨年12月、レブロン・ジェームズとナイキが超大型契約を締結した。契約年数は、「レブロンの一生涯」。つまり、引退後はもちろんのこと、命の続くかぎりスポンサー契約を締結したこととなる。

 ナイキが「生涯契約」を結んだのは、同社44年の歴史で今回が初めて。マイケル・ジョーダンとさえ結んでいない契約を、レブロンと結んだのだ。発表当初、ナイキは契約金額を非公開とし、「選手個人との契約額としては、ナイキ社史上最大のもの」とだけ報じられていた。

  さまざまな推測が飛び交うなか、有力だった契約金額は「4億~5億ドル(約400億~500億円)」。しかし今年5月、ラッパーのカニエ・ウェストが、 「レブロンとナイキの契約は10億ドル(約1000億円)」と発言した。「カニエの発言は真実か?」との質問を受けたレブロンの代理人マーベリック・カー ターは、明確な返答は避けたものの、天を指差し、「素晴らしい契約だ。ナイキは契約には大満足している」と笑って答えている。

 ナイキがレ ブロンと生涯契約を結んだ背景には、ステファン・カリーを逃したことへの反省があるだろう。カリーは幼少期からNBAデビュー後も一貫してナイキのシュー ズを履いていたのだが、デビュー数年はケガがちだったため、2013年にナイキはカリーとの契約を見送る。そのタイミングで手を差し延べたのが、急激に市 場を拡大してきたアンダーアーマーだ。

 同年の秋、年間400万ドル(約4億円)以下の金額でカリーと契約。今の活躍を思えば、破格の安さ だ。そして契約直後、カリーはオールスター出場を果たし、今や押しも押されもせぬNBAの顔となった。2024年まで契約を結んでいるアンダーアーマーと の金額は明らかにされていない。レブロンとの生涯契約は、ナイキの意地の表れだったのかもしれない。

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