涙のレブロン。前を向くカリー。NBAファイナル、新たな物語の始まり (5ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro  photo by Getty Images

 キャブスの初優勝は、クリーブランド市民にとっては単なる優勝ではない。クリーブランドを本拠地とする北米4大プロスポーツリーグのチームが優勝したのは、クリーブランド・ブラウンズがNFLチャンピオンとなった1964年以来、実に52年ぶりとなるタイトルだ。

 さらにいえば、レブロンはプロデビューした2003年から2010年までキャブスに在籍し、1度はNBAファイナル(2007年)にたどり着くも、優勝には手が届かなかった。その後、マイアミ・ヒートに4シーズン在籍し、2度の優勝を果たしたレブロンは2014年、ふたたびキャブスに加入。悲願の初優勝は、復帰したときにファンと交わした「生まれ故郷にチャンピオンシップをもたらすために帰ってきた」という約束が果たされた瞬間でもあった。

 一方、ファイナル歴史上初めて「1勝3敗から敗れ去ったチーム」となったウォリアーズからすれば、キャブス優勝の瞬間は悲劇以外の何物でもない。「73勝もしながら優勝できなかった」という事実が、落胆に拍車をかける。「第5戦にグリーンが出場していたら......」「ボーガットがケガをしなければ......」と、ファンは悔やんでも悔やみきれないはずだろう。

 しかし、誰よりも早く前を向いたのが、他ならぬエースのカリーだった。視界に入ることすら受け入れ難いはずの歓喜に沸くキャブスの面々から、カリーは目を逸らさなかった。

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