NBAを目指す八村塁が「バスケは楽しいです」と言える原動力 (4ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 それも致し方ない。八村は日本の高校にはライバルがいなかった。だからこそ、佐藤コーチは日本を飛び出す八村に対しては限界を作らず、幅広いポジションを経験させてきた。しかし恩師の指摘に関しては本人にも言い分がある。試合のピーキングを重視しているのだという。

「ずっと全力でやっていると、ここだという時に力が出ない。大事な時にもうひとつ先の力を出すことが大事」だと心得ているようで、佐藤コーチも「余力を残していることで周りがよく見えているし、ある意味、強い相手とやればやるほど本領を発揮する物怖じのなさはこれまでの日本にはいなかったタイプ」だと認めてもいる。

 次なる舞台では100%、もしくはそれ以上の力でやらなければ蹴落とされる競争世界に飛び込む。強い相手とやり合うことで発揮する力はどう進化していくのか。佐藤コーチは高校3年間での土台作りを終え、「今よりももっとガツガツとお腹をすかせるようなハングリーさを出してほしい」との課題を与えて送り出す。

 すでに厳しい現実に直面もしている。現在は、9月の入学を目指して猛勉強中だが、NCAAでプレーするためには、高校の評定平均(GAP)および英語での大学進学適性テスト(SAT)の点数がNCAAの基準を満たす必要があり、準備段階であるプレップスクールを経ずに、ストレートにNCAAの強豪校に入学するのは難関だと言わざるをえない。それでも今は「バスケのためならば勉強も苦ではない」とハングリーさが出てきたところだ。

 これまでもこれからも、八村を突き動かしているのは「バスケがうまくなりたい」――というモチベーションだ。17歳の今は苦しいことから逃れず、ただひたすらにチャレンジしていくことが成長につながる。

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