【男子バスケ】田臥、竹内が目覚めさせた代表の新エース比江島慎 (3ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 転機は少しだけ周りが見えるようになった昨年のジョーンズカップ(台湾主催の国際親善試合)だった。「アジアのガードはボール運びを速くプッシュして、オールコートの展開を作っている」(比江島)ということに気づき、速いテンポでリズムを作ることを覚えてきた。昨年のアジア競技大会では、大会中盤から攻める形が出てきて、辻直人(東芝、今回は怪我で代表には選出されず)と2ガードを組んで、20年ぶりの銅メダル獲得の中心選手となった。

 今大会もまた、1次ラウンドではPGとしてスタメンを務めていたが、オフェンスが重たくなったことで、2次ラウンドからはPGに田臥、SGに比江島というコンビを組ませたところ、これがピタリとハマった。とくに準決勝のフィリピン戦では1対1の能力が爆発。前半22点、トータル28点を稼いだオフェンス力は衝撃的だった。

 しかし、70-81と終盤に振り切られてしまい、試合後は悔しさから涙が止まらなかった。「高校まではよく泣いていた」と本人は言うが、大学以降、比江島が人前で泣いたのは初めてのことだ。

「今回は金丸(晃輔、アイシン)さんと辻さんという点取り屋がいなくて、長谷川(健志HC)さんが自分中心のチームにしてくれたので、背負うものが違いました。準決勝では点を取ったといっても、第4クォーターは体力が続かなくて0点だったので責任を感じています」

 ミックスゾーンで泣いていたこともあり、隣でインタビューを受けていた勝者、フィリピンのボールドウィン・ヘッドコーチ(HC)が、比江島の肩を抱き「You are Champion」との言葉をかけている。その場面は印象的なシーンとして日本のテレビ中継に映し出された。

「お世辞かもしれませんが、相手のヘッドコーチに認められたことは素直にうれしいし、少しは救われた気持ちになったし、次はもっとやってやろうと思いました」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る