【NBA】不調のキャブスが輝きを取り戻した「あるキッカケ」 (2ページ目)

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko  photo by Getty Images

「テレビで映らない部分だから分からないかもしれないけれど、このチームは僕がこれまでに経験した中で一番、仲がいいチームなんだ。試合や練習前の準備をしているときでも、ボウリングでも、みんな楽しんでやっている。お互いに一緒にいるのが楽しいんだ」

 そしてその翌日、キャブスはレイカーズに勝って連敗を止め、さらに次の日もクリッパーズに勝って2連勝をマーク。それから、今まで負けなしの11連勝中だ(2月3日現在)。

 もちろん、ボウリングだけが治療薬ではない。1月上旬に行なったふたつのトレードで、ティモフェイ・モズコフ(前デンバー・ナゲッツ/C)、J・R・スミス(前ニューヨーク・ニックス/SG)、イマン・シャンパート(前ニックス/SG)を獲得して戦力を補強したことや、何よりもレブロンが健康になって戻ってきたことが、チームの調子が上がってきた直接的な理由であることは確かだ。

 それでも長いNBAシーズンの中で、バスケットボールを離れてリフレッシュしたことが転機となるケースは珍しくない。たとえば、2年前のマイアミ・ヒートはトロントでの遠征試合後、マイアミに戻る飛行機の離陸時間を遅らせてチーム全員でスポーツバーに行き、スーパーボウルをテレビ観戦したことがあった。そうやって楽しい時間を過ごしたことでチームの結束が強まり、NBA史上歴代2位の27連勝のキッカケとなっている。

 実際、チームを築いていく過程には、そういった小さなキッカケが溢れている。練習の積み重ねや試合の勝敗だけでなく、コート上やコート外での様々な体験をともにすることで、チームらしさが生まれ、味方に対する信頼が強まっていく。

 敵地ロサンゼルスでの試合では、コート上でもチーム結束のキッカケとなる出来事があった。腰を痛めていたラブが、「それでもチームのために戦いたい」と出場を直訴し、接戦の第4クォーターにはドライブインしてきたレイカーズのPGジェレミー・リンを正面から止めてチャージングを取ったのだ。腰を痛めていたラブの身体を張ったプレイを、チームメイトたちは見逃さなかった。

 試合後、レブロンはこう語っている。

「シーズン中には、『チームメイトと近づいた』と感じる瞬間が何度かある。ケビン(・ラブ)が今夜やった、休むこともできたのに故障を押して試合に出て戦ったこともそうだ。『できる範囲のことをやってくれ』と頼んだら、それをやってくれた。3ポイントシュートを決め、リバウンド争いをし、腰が痛くてこれ以上プレイできない状態なのにチャージングまで取った。そういう瞬間こそ、チームが前に進んでいると感じるときだ」

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