山形発! バスケットリーグ統合問題、解決の糸口は? (2ページ目)

  • 木村元彦●文・写真 text&photo by Kimura Yukihiko

 そんな吉村が2013年から、パスラボ山形ワイヴァンズの社長に就任してNBLの二部リーグであるNBDLに参入して来た。これまでJリーグ、プロレスを経営者の立場で地方から支えて来た人物であれば、バスケ界のリーグ問題を相対化して語ってもらえるのではないか。さらには映画や通信のエンターテインメント産業を手掛けて来たキャリアからはプロバスケットの未来についても知見があるであろう。山形で話を聞いた。


bjは上場が目的!?

――吉村さんがワイヴァンズ、つまりバスケ界に参入されていこうと思った理由は何だったのでしょうか。

「実は全然予定外で、元々山形市長だったうちの父が県のバスケットボール協会の会長を約20年間やっていたんですね。それで亡くなったときの葬儀に4000人が集まってくださったんですが、その後バスケットボール葬というのをバスケットボール協会がやってくれて、200人ぐらい集まってくれたんです。そうやってお世話になったのもあって、私が経済人で多くの山形のスポーツ人は知っているということで、お話があり、恩返しの意味もあり引き受けました」

――自分もbjとNBLの経営者の方を何人か取材をしてきたのですが、吉村さんはプロスポーツクラブ経営者のスタンスから見て、両者をどのように感じられていますか。この期に及んでもなぜ統合できなかったのか。

「うちは(チームを)立ち上げたのが一番新しいので、私はbjリーグの中野社長、NBLの山谷COO、両方の方にお会いしています。誘われた際に最初はbjに傾いていたんです。それが入らなかった理由は、bjリーグの場合、バスケットをしている人たちと経営にかかわっている母体が異なっていたからです。

 当初bjはJリーグのように、それぞれのチームに表決権を与えて、意見を言い合って、合議制で進めていくという平等の制度があったわけですね。しかし、途中から変わって上に取締役会があって、そこの株主は必ずしもbjと関係なかったりする。それは果たしてどうなのかな、というのがちょっと疑問にあって。目的は競技スポーツじゃないなと直感的に思ったんですね。あるメンバーにbjの最終目的は上場でしょう?と言ったら、そうですと。それなら、上場だったら上場の道を行けばいい。

 NBLは公益財団法人ですから、競技スポーツでやったらいいと。だから、どちらが正しいというのではなくて、もう目的地が違うのだから、一緒になれるわけがないというのが私の見解なのです」

――統合ができない根本的な理由はそこにあったわけですか。確かに組織形態の違いというのは、目的の違いに通じますね。

「いろいろな話が来ました。bjのあるクラブは債務超過になっているから、それをNBL側で持ってくれたらすぐに解散するとか。でもね、それはおかしいでしょうと。絶対ダメですとトップの方にも言いました。やれるとしたら純粋な条件でやらないといけない。地方のスポーツクラブは、選手たち1人1人がモチベーションが高くなって、地域に理解される組織じゃないと成立して行かないのです。

 事を急いてFIBAが言ったから、ただそういうふうにやるということ自体がおかしいと話しました。FIBAという機関も重要だけれども、もっと大切なことは国内の次の時代の日本の選手たちがバスケットをやっていける環境を作ること。それが日本バスケット協会に求められているんじゃないかと」

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