bjリーグ青木康平「日本バスケ界を代表する選手がもっと発言すべき」

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

――bjリーグに10年所属し、ここがいい、これは改善すべきと思うことは何ですか。

 青木 まずいいところは、僕たちは試合を見て喜んでもらうのが仕事なので、地域での活動をして本当にファンとの絆ができたと思います。悪いところはいっぱいあって、まず初年度は42試合で、今は8ヶ月のレギュラーシーズン52試合と、プレイオフと勝ち進んで、それだけの労力と情熱をかけてきたものが、リーグのチャンピオンを決めるのに、ファイナルのたった一試合で終わってしまうことです。8ヶ月間、僕らが努力してきたことへの対価がたった一試合で終わっていいとは思えなくて。バスケはチーム力を見せるのが最大の魅力。一発勝負の楽しみもあると思うんですが、それは天皇杯みたいなトーナメントでいい。

 やっぱりプレイオフだからこそ総力戦でやるのがバスケットの面白さだと思う。対策を練ったり、戦術を出したり、ガードだったら、今ノッている選手を見極めて使ったり。プレイオフで何試合もやり合うことで本当のチーム力がついていくと思う。bjがプロリーグというならば、そういうところを改善していかないと、競技力が発展していかないと思います。

――青木選手はSNSでも、試合後などに自分の意見をよく発信しています。もっとも、SNSの使い方はその人の自由ですが、それでもおとなしい選手が多いです。選手たちがもっとこう行動したら良くなっていくのに、と思うことはありませんか。

青木 今回、僕が立ち上げたWATCH&C ACADEMYで、初めてリーグの垣根を越えて、福岡出身の選手でトレーニングやゲームをしたんですね。その中で小林大祐(日立→リンク栃木)と橋本竜馬(アイシン)らNBLの若い選手も来てくれたんです。僕自身もNBLの選手に話を聞けたことは貴重でした。彼らはすごくうまくて、内に秘めているものがあるんですよね。もし彼らがこういう経験から得たものでアクションを起こしてくれて、プレイにつなげていってくれたらいいなと思います。

 僕も大学までは、言ってしまえば日本の中ではエリートコースを歩んでいたのですが、そこからドロップして外から日本のバスケットを見た時に、与えられた環境の中でプレイしていることを実感したんです。僕が一歩外に出てしまえば、バスケットをする場所もないし、大学の時だったら履くシューズを提供されるチームもあるけれど、(エリートコースを外れると)自分で買わなきゃいけなかった。でもこれって当然のことですよね。だから、エリートの選手たちはいい環境が当たり前だと思ってるんですよ。

 自分がうまくなりたくて、自分の体を鍛えたいのに、チームの指示に従って、そのやり方しか知らない。外に出ていろんな人に聞けば、もっといい方法があるかもしれないのに。自分から何かアクションを起こすことをしないまま来たのが、多くの日本の選手だと思います。自分はアメリカや韓国で練習したことで、負けたくないという競争心が芽生えました。日本は何かにつけて調和を求められるじゃないですか。あまり出過ぎると「お前、なんだよ」と言われるから発言もしなくなる。でも僕がbjリーグに入った時は外国人のヘッドコーチに個性を求められた。僕も最初は発言を控えていた人間だったんですけど、でもそれをヘッドコーチのジョー・ブライアントに「青木康平という人間を出せ」と言われて、プレイでも言葉でも行動でも示していけるようになったんです。そういう行動力がバスケットの向上にもつながると思います。

 僕が思うには、僕なんかよりも、日本のバスケット界を代表する選手が発言することによって影響が出てくると思うので、もっともっと、いろんなことを言い合いたいです。選手からアプローチして、変えていけるところってあると思うんですよね。

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