世界選手権開幕。「『日本の渡嘉敷来夢』を知ってほしい」 (2ページ目)

  • 小永吉陽子●取材・文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 渡嘉敷は世界選手権直前のヨーロッパ遠征で、バスケ人生における2番目のターニングポイントを迎えたという。

「これまでのバスケ人生の1位」とみずから言うターニングポイントは2012~2013年のシーズン。高校時代から繰り返していた右足甲の舟状骨の骨折から完全復帰した時だ。傍から見ればまったくそうは見えないかもしれないが、渡嘉敷は度重なる足のケガによって、自分のプレイに自信を持てなかった時期があった。それが手術とリハビリを経て、支えてくれる人に感謝し、コートに立てる喜びを味わい、バスケができることのありがたさを知り、人間的に成長できたという。「ケガを克服して弱気な自分とおさらばできた」と言うほど、バスケ人生においての転機だった。

 そして、ターニングポイントの2位にランクインした今年のヨーロッパ遠征は「バスケがこんなに面白いなんて知らなかった」と口にするほど、新たな発見と驚きを与えてくれた。

 日本は世界選手権前の強化において、9ヶ国と計17試合を行なった。これだけの国と戦えたのも、43年ぶりにアジアチャンピオンに輝いたことで、対戦のオファーが増えたのが要因である。

 世界ランキング2位のオーストラリアや4位のフランス、強豪のトルコなどと実戦を積み、さらにはこれまでだったら考えられなかったことだが、世界選手権で対戦するスペインやチェコとも、スカウティングをされることを覚悟のうえで対戦に踏み切った。たとえ手の内を知られても、強豪国と対戦することで得ることのほうが多いと判断したのだ。

「スペインやフランス、オーストラリアに勝ち切ることはできなくても、高さとフィジカルの強さに対する"慣れ"は出てきた」と内海ヘッドコーチは手応えを語る。

 そんな、実り多き遠征の中で渡嘉敷は、日本にいては味わえない攻防の駆け引きを体験してきた。

「日本では自分より身長の高い人と対戦することなんてないから、(この遠征では)ファウルのもらい方ひとつとっても考えてやらなければならず、自分から仕掛けないと攻めることもできなかった。そのせめぎ合いがとても面白くて、楽しくてしょうがなかった。もしかしたら、自分は今すごく成長できてるんじゃないかと感じながらプレイしていました」

 新しい扉を開けてしまった今、もう過去の自分に満足することなどできない。渡嘉敷は世界選手権のデビューを、今か今かと心待ちにしている。

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