【NBA】ファイナルはヒートvs.スパーズ。12年ぶりの3連覇なるか? (3ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro photo by AFLO

 レブロンがペネトレイト(※)からシュートをねじ込めばOK。2枚目、3枚目のディフェンスがたまらずカバーに入れば、レブロンは3ポイントシュートラインで待つアレンやルイスにキックアウトパス。このパスを、プレイオフの3ポイントシュート通算成功数で歴代第1位の記録を保持するアレン、もしくはカンファレンス・ファイナル第5戦で6本のスリーポイントを沈めたルイスが、いかに高確率で沈められるか――。その確率次第で、ヒートの攻撃力は激しく上下する。

※ペネトレイト=ゴールに向かってドリブルで切り込み、オフェンスの突破口を作るプレイ。

 一方のスパーズは、個の力にとらわれないチームカラーに最も適した選手ともいえる、フォワードのディアウに注目したい。インサイドもアウトサイドもこなすオールラウンダーのディアウは、マッチアップによってポジションを変え、どこからでも点を取れる。しかも、プレイオフに入って調子も右肩上がりだ。ファイナルでヒートは、この第4の男に手を焼くだろう。

 そして、誰よりもリベンジに燃えているはずのジノビリにも要注目だ。昨年のファイナルではスランプが続き、第5戦こそ24得点・10アシストと活躍したものの、運命を分けた第6戦では9得点止まり。さらに、ターンオーバー8回とチームに大きなブレーキをかけた。昨年のファイナル後、一度は引退を示唆したものの、現役続行を決断し、今シーズンに臨んでいる。ファイナルで残した後悔は、ファイナルでしか払拭できないはずだ。

 異なる両チームのスタイル。しかし、どちらのスタイルも、ヘッドコーチの戦術、ひいては首脳陣のチーム編成は共通し、「優勝するためには」という思考を具現化したものだ。このファイナルは、どちらのスタイルが優れているのか、「イズム」と「イズム」の頂上決戦と言っていいだろう。

 ヒートも、スパーズも、これまで積み上げてきたスタイルとイズムを貫き通すはずだ。ファイナルの舞台だけ、よそ行きのドレスでなど踊れない。

 ちょうど20年前の話だ。1994年のNBAファイナル――。アキーム・オラジュワン擁するヒューストン・ロケッツと、パトリック・ユーイングの所属するニューヨーク・ニックスが対戦した。ニックスはレギュラーシーズン、そしてプレイオフに入っても苦戦の連続。ただ、ファイナルの切符を手に入れるまで幾度となく窮地を救ったのが、ジョン・スタークスだった。しかし、ファイナルになると、スタークスは絶不調に陥る。それでも、現ヒートのGMであり、当時ニックスのヘッドコーチを務めていたパット・ライリーは、スタークスを起用し続けた。その結果、第7戦までもつれ込む大激戦の末、ニックスは敗退。スタークスは戦犯扱いされた。

「なぜ、スタークスを使い続けたのか?」というメディアの問いに、ライリーは静かに、こう答えている。

「ダンスは、パーティーに連れて行ってくれた者と踊るものだ」

 ヒートはレブロンと踊る。
 スパーズのダンススタイルは決まっている。

 ヒートのスリーピートか、スパーズのリベンジか。今シーズン最後のダンスパーティーの幕が切って落とされる――。

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