【NBA】大物獲得から若手育成へ。ビッグ3ブーム終焉の予感 (3ページ目)

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi 是枝右恭●写真 photo by Koreeda Ukyo, AFLO

 ただ、ニックスとレイカーズの低迷を見ていて思ったのは、「NBAは今、新たな局面を迎えているのでないか」ということです。というのも、近年のニックスとレイカーズは、「ビッグ3」という流行に乗って頂点を極めようと試みました。ニックスはSFカーメロ・アンソニー、PFアマーレ・スタウダマイアー、Cタイソン・チャンドラーの3人。レイカーズはSGコービー・ブライアント、PGスティーブ・ナッシュ、Cドワイト・ハワード(現ヒューストン・ロケッツ)です。

 ビッグ3が全員揃ってコートに登場すると、彼らは大きな力を発揮します。しかし近年は、両チームともケガなどで3人揃わないケースが目立ち、セカンドユニットに頼る試合が多くなっていました。しかし、ビッグ3を維持するために高額な年俸を支払っているので、サラリーキャップの問題でサブメンバーの選手層は決して厚くありません。その結果、負けが先行してしまい、今回の低迷につながったのだと思います。

 一方、今シーズン好成績を残しているのは、ペイサーズやウィザーズなど、ドラフトで獲得した若手プレイヤーを戦力になるまでじっくりと育てたチームです。これらのチームは年俸の高くない若手を中心に戦っているので、万が一、主力にアクシデントがあってもサブメンバーの選手層が厚いため、大崩れしにくいのです。ペイサーズではルイス・スコラやC.J.ワトソンといった今季新加入の中堅が良い働きを見せ、ウィザーズではチーム生え抜きのトレバー・ブッカーが勝利に貢献していました。まさに、ニックスやレイカーズのチーム作りとは対照的と言えるでしょう。

 たしかに少し前までのNBAは、ドラフト権を手放してでも実力のある即戦力をトレードで獲得し、一気に優勝を狙う風潮がありました。しかし今後は、ドラフトが見直されるようになるのではないでしょうか。もし今シーズン、マイアミ・ヒートの「ビッグ3」が敗れ、ドラフトで獲得した若手を中心としたチームがNBAを制覇すれば、新しい時代が到来するかもしれません。プレイオフの結果次第では、今年がターニングポイントになるのではないでしょうか。

 プレイオフが始まり、ヒートの3連覇に注目が集まっていますが、僕は新しい時代の訪れにも期待しています。ぜひ、今年のプレイオフは、ドラフトから育った生え抜きプレイヤーたちもチェックしてほしいと思います。


取材協力:WOWOW
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プロフィール

  • 佐古賢一

    佐古賢一 (さこ・けんいち)

    1970年7月17日生まれ、神奈川県出身。179cm/ポイントガード。北陸高→中央大→いすゞ自動車→アイシン精機。日本を代表する司令塔として活躍し、『ミスターバスケットボール』と呼ばれる。的確な判断力と要所の得点力で、JBLリーグ優勝9回、全日本選手権優勝12回を果たす。2011年に現役引退。
    WOWOW(http://www.wowow.co.jp/sports/nba/)でNBA解説など活躍の場を広げている。現在はJBA理事ナショナル男子を担当。近況はコチラ

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