【NBA】大物獲得から若手育成へ。ビッグ3ブーム終焉の予感 (2ページ目)

  • 佐古賢一●解説 analysis by Sako Kenichi 是枝右恭●写真 photo by Koreeda Ukyo, AFLO

新しい時代が訪れるのではないかと語る佐古氏新しい時代が訪れるのではないかと語る佐古氏 そのプレイを見て思い出したのが、アレン・アイバーソン(1996年~2011年/フィラデルフィア・76ersなど)です。20年近く前、ユニバーシアード福岡大会で彼とマッチアップしたのですが、そのときのアイバーソンのスピードはすごかった。スカウティング担当から、「アイバーソンは右から左へのクロスオーバー(※)だけだから」と聞いていて、「それならどうにか止められるかな」と思っていたら、あっという間に目の前から消えて、見事に抜き去られました(笑)。そんな懐かしいことを思い出すぐらい、ウォールのスピードは印象的でしたね。

※クロスオーバー=オフェンスプレイヤーがディフェンスを抜き去るために左右に動いて相手を揺さぶるプレイ。

 そして、ウィザーズと並んで今シーズン、予想以上の活躍を見せたのがトロント・ラプターズ(イースタン・カンファレンス3位)でしょう。昨シーズンの34勝48敗・勝率.415から、今シーズン48勝34敗・勝率.585と大きく勝ち星を伸ばし、6年ぶりのプレイオフ進出を果たしました。ラプラーズを率いているドウェイン・ケイシー・ヘッドコーチ(HC)は、僕が現役時代にとてもお世話になった方です。ケイシーHCが日本代表のアドバイザーを務めていたときに知り合い、彼がシアトル・スーパーソニックス(現オクラホマシティ・サンダー)のアシスタントコーチをやっていたときは、サマーキャンプにも呼んでもらいました。当時からすごく厳しいコーチで、僕が間違ったプレイをすると、何度も胸ぐらを掴まれた思い出があります(笑)。でも、それぐらい熱いコーチで、若手への指導には愛情が溢れていました。今のラプターズは若手が多いので、同じように熱心な指導でチームを築き上げていったのでしょう。

 デマー・デローザン(SG)とカイル・ラウリー(PG)のガードコンビがチームを牽引し、21歳のヨナス・バランチュナス(C)や23歳のテレンス・ロス(SF)などの若手が脇をガッチリとサポート。攻守に渡ってバランスの良いチームに仕上がりました。非常に勢いがあるので、これからさらに楽しみなチームだと思います。

※ポジションの略称(PG=ポイントガード、SG=シューティングガード、SF=スモールフォワード、PF=パワーフォワード、C=センター)

 一方、レギュラーシーズンを見ていてガッカリしたのは、ニューヨーク・ニックス(イースタン・カンファレンス9位)と、ロサンゼルス・レイカーズ(ウェスタン・カンファレンス14位)の2チームでしょう。東西を代表するビッグクラブがこれほど低迷するのは、NBAファンとして非常に残念に思います。日本のプロ野球で例えるなら、巨人と阪神がリーグの5位・6位に低迷するようなものです。NBAは世界中にファンを持つ巨大組織なので、彼らがプレイオフに出ないと視聴者は激減し、人気低迷につながります。さまざまなチームが切磋琢磨するのは良いことですが、NBA全体のことを考慮すると、ニューヨークとロサンゼルスの2大ビッグクラブがシーズン早々にリタイアするのはいただけません。

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