【NBA】プレイオフ開幕。「3連覇」最大の壁はヒート自身?

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro photo by AFLO

 一方、ラプターズがシーズン中にエースのSFルディ・ゲイをトレードした際は、誰もが来シーズン以降のサラリーキャップに空きを作るため、今シーズンをあきらめたと思ったはずだ。しかし、ボールを長時間キープし過ぎてオフェンスリズムを乱していたゲイがいなくなると、今年のオールスターに初選出されたSGデマー・デローザンと、在籍2年目のPGカイル・ラウリーを中心に、チームケミストリーが急激に上昇。ゲイのトレード後のチーム成績は、42勝21敗・勝率.666。この数字は、ヒートとペイサーズのイースタン上位2チームと遜色ない。さらに、レギュラーシーズン最後の10試合が7勝3敗と勢いもある。

 どのチームも一長一短はあるものの、ヒートの3連覇阻止に躍起だ。しかし、ヒートの前に立ちはだかる最大の障壁は、ヒート自身かもしれない。今年で32歳となり、ケガがちのPGドウェイン・ウェイドは今シーズン、レギュラーシーズンの出場が54試合に留まった。平均19.0得点は、2003-04年のルーキーシーズン以来、初めて20点を割り込んでいる。他にもSGレイ・アレンが38歳、PFユドニス・ハスレムが33歳、さらに35歳のSFシェーン・バティエは今シーズン終了後の引退を表明している。多くの主力選手が峠を越えたにもかかわらず、ヒートは目立った補強を行なわなかった。他チームと比べて分が悪かったインサイドを補強すべくセンターのグレッグ・オデンを獲得するも、思うほどの結果は残せていない。ヒートが新たに加えた武器といえば、1試合平均1本以下の3ポイントシュートだったセンターのクリス・ボッシュが、今シーズンは毎試合3本近く打つようになったことくらいか。

 ヒートのレギュラーシーズン最後の10試合は4勝6敗。4月15日のウィザーズ戦では、絶対エースのSFレブロン・ジェームズを温存したとはいえ、21点差の大敗を喫している。ウェイド、ボッシュ、レブロンの「ビッグ3」と呼ばれたのは過去の話。今のヒートは、完全に「レブロン中心」のチームだ。

 昨年のカンファレンス・ファイナルでは第7戦までもつれこみ、NBAファイナルでも2勝3敗で迎えた第6戦、ヒートはゲーム終了5秒前までサンアントニオ・スパーズに3点のリードを許していた。しかし、レイ・アレンのミラクル3ポイントシュートで追いついて延長戦を制し、続く第7戦も接戦の末、スパーズを撃破して2連覇を達成。そもそも、他チームとの実力は拮抗していた。今シーズン、その差がさらにわずかなものとなっているのは間違いない。

 ただし今の状況は、ブルズが最初のスリーピートを達成した1993年に似ている。この年、ブルズは第1シードの座をパトリック・ユーイング率いるニューヨーク・ニックスに明け渡した。そしてカンファレンス・ファイナルで両者はぶつかると、2連敗後に4連勝を飾ったブルズがファイナルに進出。その後、ブルズはチャールズ・バークレーを擁するフェニックス・サンズを4勝2敗で破り、スリーピートを達成した。

 マイアミ・ヒートがその名を歴史に刻み込むために、乗り越えなければならない壁は高い。果たしてレブロン・ジェームズはNBAファイナルが終わった日、その指に3つ目のチャンピオンズリングをはめることができるだろうか?

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