【NBL】プレイオフ進出なるか。北海道と栃木を進化させた「ユーロスタイル」 (2ページ目)

  • 小永吉陽子●文・写真 text&photo by Konagayoshi Yoko

 もっと細かく言えば、栃木のシレイカHCはスクリーンの使い方やボールのないところでの動き、ゾーンディフェンスで変化をつけることにこだわり、北海道のウルタドHCは分析から準備を完璧にして挑むことにこだわる。細部にまで至る準備は、強豪クラブがしのぎを削るヨーロッパでは当たり前のスタイルだ。

 このユーロスタイルに対して選手たちは「これまでやってきたバスケとは真逆」(栃木・古川孝敏)と言いながらも、「歯車が噛み合ったときは本当に面白い」(北海道・桜井)と手応えを感じている。

 たとえば、栃木のシューターを担う古川は、これまでスペースを広げてコーナーでパスを待ち、田臥もスペースを見つけては素早くパスを送っていた。

 しかし、今シーズンが始まる前のリトアニア遠征で現地のクラブチームと対戦してからは、「スペースを広げるのではなくて、5人がタイミングよく動いてスペースを埋めていく感覚で、その時にできるズレを生かして攻めることがリトアニア式」(田臥)だと知ることになる。これまでいくらシレイカHCに言われてもイメージできなかった"先読み"の動きが、実際にリトアニアのチームと対戦し、肌で感じることで理解度が増したというのだ。

 北海道の場合はオープンチャンスを作るために、強いパスの精度を高める練習から始まった。「どんなに強いパスを出しても、こんなパスは世界では通用しないと言われ、ドッジボールのような強くて速いパスを求められて、やり直しばかりだった」と桜井は振り返る。

 つまりは、身体能力の高さと1対1の能力を誇る王者アメリカに対して、リトアニアやスペインといった国々がどうすれば対抗できるか、と考案した形がユーロスタイルなのだ。現にリトアニアは2004年のアテネ五輪において、シレイカHC自身がアメリカを倒しており、スペインはここ2大会のオリンピックにおいてアメリカと決勝で好勝負を繰り広げている。

 NBLでいえば、アイシンやトヨタ、東芝といった強力なインサイドや選手層の厚さ持つ上位に対して、チーム全員でパスをシェアしてチャンスを作り出して対抗するのが北海道や栃木なのである。だからこそ、チームの共通理解が深まったときは桜井の言うように"歯車"が噛み合い、走る展開から勝利に結びつくのだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る