【NBA】ペイサーズ首位。躍進の理由は、戻ってきた「切り札」の存在

  • 宮地陽子●文 text by Miyaji Yoko photo by Getty Images

 たとえば、昨季のカンファレンス・セミファイナル第6戦で、勝利に導く活躍を見せたランス・スティーブンソン。若いころから才能を認められていたスティーブンソンは、全米注目の選手でありながら、警察沙汰で問題になったことで、2010年のドラフトでは2巡目までどこからも指名されなかった。そんな彼を、バードは全体40位で指名した。ペイサーズのベテラン選手たちの中なら、大きな問題を起こすことなく、その才能を発揮できると信じたからだ。

 バードは、練習が終わるたびにスティーブンソンを自分の部屋に呼び、何をしなくてはいけないかを説いた。試合を見て、学び、ベンチにいる時間も無駄にしないようにと、スティーブンソンに話したのだという。

「バードは僕を信じてくれた」と、スティーブンソンは語る。「NBAでプレイできると言い続けてくれた。今、ここにいるのは彼のおかげだ」。

 また、昨季のプレイオフでレブロン・ジェームズ(マイアミ・ヒート)と互角の戦いを演じ、スーパースターの仲間入りをしたポール・ジョージも、バードが信じてドラフト指名し、その才能を開花させた選手のひとりだ。大学時代、強豪チームにいたわけではなかったジョージは、プロ入り当初、まだ才能を発揮しきれていなかった。そんなジョージに対して、バードは時に公(おおやけ)の場で批判し、また、時には電話で叱咤激励して、もっと上を目指すように背中を押し続けた。

「ラリー(・バード)は他の人の反対を押し切って、僕を(1巡目の)全体10位でドラフト指名してくれた。僕が彼にお返しできるとしたら、それは、彼が見出してくれたとおりの選手になることだ」と、ジョージは語る。

 一方、バードによると、ペイサーズを変えたのは33歳のベテラン、デビッド・ウェスト(PF)だという。努力家で、一切の妥協をせず、地味なハードワークをいとわないウェストがFAでペイサーズと契約した時、チームは劇的に変化し、強豪への道を歩み始めたのだと。

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