JBAの育成とスラムダンク奨学金が見据える「日本バスケの未来」 (2ページ目)

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro

 昨年、JBA(日本バスケットボール協会)は、ジュニア世代(小学生~高校1年生)の長身者・長身候補者を公募し、『ジュニアエリートアカデミー』を立ち上げた。2年目となる今年は、トライアウトを開催してメンバーを選考。選ばれた15名が、10月から来年6月まで計6度、2泊3日のキャンプを東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンター(※)で行なっている。

(※)味の素ナショナルトレーニングセンター=文部科学省が管轄する日本のトップレベル競技者用トレーニング施設。

 ジュニアエリートアカデミーのプロジェクト長、佐々木三男氏は言う。

「長年の日本バスケットボール界の希望であり、課題であった計画がようやく走り始めました。2020年に向け、ジュニア世代の育成は急務であり、大変な挑戦です。若い選手たちだけではなく、育成環境を整えるために、まずは大人が覚悟を持たなくてはいけない。将来が明るいものでなければ、才能ある選手も、バスケットに留まってくれないでしょう。もはや、待ったなしの状況です。このプロジェクトは、今はまだ小さな事業ですが、少しでもその効果を全国に波及させていきたいと考えています」

 ジュニアエリートアカデミーの練習を指揮するのは、トーステン・ロイブル(JBAスポーツディレクター)だ。ロイブル氏は、ドイツのプロAリーグでのヘッドコーチや、U-16ドイツナショナルチームのコーチを務めた経歴を持つ。日本でも、トヨタ・アルバルクをリーグ優勝に導き、コーチ・オブ・ザ・イヤーに輝いている。

「私は、日本のバスケットボールの可能性に関して、決して悲観していません。特にジュニア年代は、相当な可能性を秘めていると思います。まず、競技人口が多い。日本の中学生の競技人口は、ドイツ全体のバスケット人口よりも多いのです。それだけ可能性がある。また、これだけの数の選手が、しかも勤勉にバスケットに取り組んでいるのは、日本だけです。現に私は、世界で活躍できたのではと思える選手を、過去何人も見てきました。ただ、彼らはポテンシャルを最高値まで発揮できなかった。世界で通用する選手になるためには、勤勉さとハードワークだけでは不十分なんです」

 では、日本バスケには何が欠けているのか? ロイブル氏は、こう続ける。

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