2013.10.04

【男子バスケ】田臥勇太が語る「新シーズン」と「黒子のバスケ」

  • 水野光博●構成・文 text by Mizuno Mitsuhiro 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

『黒子のバスケ』の主人公・黒子テツヤと、自身のプレイを重ね合わせて話す田臥勇太『黒子のバスケ』の主人公・黒子テツヤと、自身のプレイを重ね合わせて話す田臥勇太  バスケボール漫画『黒子のバスケ』を知っているだろうか? 強豪・帝光中学校に「キセキの世代」と呼ばれる、10年にひとりの天才が5人同時に存在し、無敗を誇った。そして中学を卒業した5人は、別々の高校へと進学。しかし、彼らの他に、もうひとりの天才――「幻の6人目(シックスマン)」と呼ばれる、黒子テツヤというプレイヤーが存在した。そしてその主人公・黒子が、チームメイトの火神大我と全国制覇を目指していく物語――。「『黒子のバスケ』を読んだことは?」。田臥選手にそう聞くと、「ガッツリじゃないですけど、あります」と答えてくれた。

――主人公・黒子テツヤは、マジシャンなどが用いる「視線誘導(ミスディレクション)」を駆使し、マークマンの眼前から消え、スティールやパスでチームの得点を導きます。現役選手の立場からすると、非現実的すぎるように感じますか?

田臥 いえ、同じようなことは常に考えます。基本的に、「どう消えるか」ってことばっかり考えていますから。オフェンスのとき、ボールを持ったチームメイトではなく、マークマンの視線を見ていたりするんです。相手の目線を盗んで、視線が切れた瞬間に動くことで、マークをずらすことができる。特に僕は(身長が)小さいので、そういう一瞬のズレを作ること、消える動きということは常に意識しています。

――プロの選手にも理解できるプレイなんですね。

田臥 ええ。試合では相手もスカウティングして来るので、『次はこういう動きだろ』と予想しています。だからその裏を突いて、空いているゴール下にいきなり飛び込んだりもしますね。でも、やり過ぎると、『そこにいたら邪魔だ!』って、インサイドの外国人選手に怒られるんですけどね(笑)。

――黒子テツヤ同様、田臥選手もパスが持ち味のひとつです。相手の意表を突くパスを出すとき、どんなことを意識しているのですか?

田臥 ボールを持った瞬間、そのまま(パスを)出せるか、一歩踏み込むか――。その違いはすごく大事にしています。なぜなら、一歩踏み込むと、ディフェンスが対応できてしまうからです。ただ同時に、いくら速いパスを出しても、受け手とイメージが共有できていないとキャッチできない。だからボールをもらうとき、誰が走り出しているか、どんな動きをしているか、ぼんやりとですがコート全体を見ますね。

――『黒子のバスケ』に登場するキセキの世代のひとり、赤司征十郎の「天帝の眼(エンペラーアイ)/相手のあらゆる動作を先読みできる能力」みたいですね。ただ、得点に直結するようなパスは、同時にリスクも高いのでは?

田臥 それはチャレンジするか、しないか、です。ビビってないことが大事だと思います。もちろん、点差、残り時間、状況によって、リスクをどれくらい負うべきかは考えますよ。

――黒子テツヤの「サイクロンパス(遠心力を利用する長いパス)」のようなロングパスも、田臥選手は実際の試合でも狙いますよね?

田臥 はい。モーションは小さいほうが、実際は通りやすいでしょうけどね。僕の場合は相手の顔の横や、手が届かないところを狙ったりもするんです。ボールをカットされないためには、より早く、ディフェンスの手が届かないところにパスを出す必要があるので。それに自分は(身長が)小さい。自分より大きいディフェンスの手にひっかけないためには、どうすればいいのか? 相手に読まれた時点でパスは通りませんので、いかにわからないようにパスを出せばいいのか、昔から意識しています。でも、そういうプレイは悩んで考え抜いたというより、面白さを感じてやっていましたね。相手が、『こんなところにパスはしないだろ』と思っているところに、パスをしたいと。もちろん、味方が取れなければ意味がないのですが、『俺はこういうパスを出す』という意識は練習で共有できるようになるし、誰が、どこで、どういう状況で欲しいのか、選手によってのクセや特徴も観察しています。