大ベテランの献身。選手兼チーム代表・折茂武彦のバスケット新リーグへの思い (4ページ目)

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

――しかし、20年前にプロ化を高らかに唱えておきながら、そこが進んでいなかったという証左でもありますよね。

折茂「でも、これまでどれだけの企業チームがなくなって来たんだという話です。今回もパナソニックみたいな大企業のチームがなくなりました。ということは、企業のトップのひと言でチームなんていうものはなくなってしまうんですよ。チームの独自性、それを作っていかなければ、バスケット自体が生き残っていけないと思うんです。

 いろんな問題がまだあるので、いつも山谷さんに会うと『山谷さん、ブレないでくださいね』と、僕は口癖のように言っています。今までひとつのプロチームの代表としていろんなことを言っておられましたけど、今度は、リーグをまとめるお立場なので、企業チームの意見を当然取り入れなければいけない。だからこそ『ブレないでください』と。

 企業チームを決して批判しているわけではなくて、やっぱり自分たちで経営していかなければいけない時期に来ていると思うんです。大企業に依存していたら、パナソニックのように一気にチームが消滅してしまうこともある。そうしたら、選手はどうすればいいんですか。

 プロチームと企業チームの意識のギャップはまだあります。試合のとき、対戦相手のある会社の人に『来シーズンから自分たちで興行も含めてやっていくのに今日は観客が少ない。大丈夫かい』と聞いたら、『ちょっと自分たちのホームタウンから離れてしまったので、社員の方が来られなかったんです』と。

 そう言った時点で、もう根本的に考え方が違うわけです。社員以外にどれだけ呼ぶか。その辺はbjが進んでいてbjを見習うべきだと僕は思っています。

 やはりお金を払って見に来てくれる人に対して、もっともっと試合だけじゃなくて、雰囲気や演出で楽しませなきゃいけない。それが今は、企業の集まりですから、そんなことやらないですよね。だから、あれは興行じゃなくて大会なんです。そこを変えていきたい」

――協会(JBA)の立場というのはどうなんでしょう。本来であれば、強いリーダーシップを持って協会が主導していくべきだと思うんですが。

折茂「そうだと思います。僕がずっと協会の先輩方に言っているのは、企業チームにプロ化を進めるにあたって断固として言えるかどうか。そこで、大企業が『何言ってるんだ』と反対してきたら、『じゃあ結構です。やめてください』と言えるかどうかですと、ずっと言ってきたわけです。なぜなら、本気でプロ化するのなら、初めは5チームでも6チームでもいいんですよ。それから増やしていけばいいじゃないですか」

――千葉ジェッツの島田社長のインタビューをした時に非常に感銘を受けたのが、彼がNBL参入の決断をしたのが、ここで1チームもbjから行かなかったら、もうプロ化の波は終わるだろうと。だったら自分が行こうと。そういう判断だと言っていました。

折茂「素晴らしいと思います。本当に勇気ある決断だと思います。実際、bjからひとつも来なかったら、前と同じ轍を踏むわけであって。それを見て、他のチームがどういう決断をしていくかによって、bjと新しいNBLというリーグがどうなるか決まっていくのかなと思います」

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