突破できるか?
今そこにある、バスケットボール新リーグ「NBL」の課題

  • 木村元彦●取材・文 text by Kimura Yukihiko 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita

――リーグのブランド化に成功していますね。

山谷「ですので、リンク栃木をこれ以上伸ばすには、田臥選手の獲得や地域活動などをやり尽くした中で、もともとのベースにあるリーグであったり、バスケットボールそのものの、ブランド力なり認知度なりメジャー度が上がらない限りは、無理だと思いました。逆に言えば、そこが変われば栃木のチームでも10億ぐらいの売り上げを出せるし、もっと伸びる可能性がある。根本的にはバスケットボールという商品は絶対売れるはずだと思っています。これは世界的にも証明されています。

 自分自身も経験則から非常に魅力ある商品だという確信を得たので、それがうまく流通していなかったり、うまく紹介されていなかったり、これまでの日本バスケ界のニュースによってマイナスの印象を持たれたりということが要因であれば、そこを改善すれば、間違いなくバスケは日本でも人気スポーツになると、私は思います」

――その核心と論拠があるがゆえに、新リーグの仕事をしようと考えたと。では新リーグの一番のテーマは何なのでしょうか。

山谷「一番は、チームを含むリーグ全体がプロフィットセンターだというモードにならなきゃいけないことです」

――それがなっていなかった。

山谷「JBLではなっていなかったです。完全に企業チームさんの理論で、市場を広げていくよりは、それぞれの企業の方向を向いていた。一番大きなステークホルダーが企業なわけですから。しかも、企業の出しているお金の費目が福利厚生なんです。これが宣伝広告になれば上京は違ってくるかなと思っています。

 たとえば韓国のKBLの場合、チームの経営を見てみると、収入の8割ぐらいを親企業からもらっているんですが、日本のプロ野球に近くて、費目が宣伝広告費なんです。そうすると、宣伝広告なんだからお客さんをとにかく満員にしろとなる。ハーフタイムでうちの製品をとにかくアピールしろと。いいか悪いかは別にして、そういうモードになるんです」

――非常にドラスティックですね。

山谷「そうです。以前、KBLの人に言われたんです。『日本では日立対パナソニックの試合は盛り上がるだろう?』『東芝対三菱電機、これはケンカになるんじゃないか?』と。そうなっていないというのは、福利厚生という文脈で来ていることが原因なんです。

 それではお客さんを集めようとか、人に見てもらおうという欲求を生み出す原理にはならないですよね。社内運動会と一緒ですから。コストセンターというのはそういう原理で、もっと厳密に言えば、福利厚生というのはバスケットボールのためのものではなく、その企業の本業のためのものですから。

 リーグというのはすなわち構成されるチームのことですから、リーグに所属するそれぞれのチームが市場を拡大して収益をあげたり、お客さんを増やしていこうという価値観にならなければ、無理だろうなと」

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