【男子バスケ】ケガから復帰。田臥勇太「もう一度、NBAの舞台へ」 (3ページ目)

  • 水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro
  • photo by Sportiva

――日本人選手とNBAの距離は近くなっていると思いますか? それとも?

田臥 日本人選手も、「少しずつ変わってきているな」っていうのはありますね。ただ、どこを目指すのか、どの山が見えているのかってことだと思います。国内じゃ、今のままでいいかもしれない。ただ、挑まなければ、何も手に入らないですから。昨シーズン、NBAでジェレミー・リン(ヒューストン・ロケッツ)(※2)がブレイクしましたけど、あれは同じ東洋人として、日本人が目指すべきスタイルのひとつだと思うんです。やっている選手が、そこを目指したいかどうか。リンを見て思うのは、『ドライブする』というプレイスタイルを貫いていますよね。これだという、その強さを感じます。ターンオーバーが多くなっても気にせず、ドライブしていく。

(※2)ジェレミー・リン=NBA初の台湾系アメリカ人選手。191センチ・91キロのポイントガード。

――リン選手は武器が明確だということですね。では、田臥選手の武器は何だと感じていますか?

田臥 スピードは生かし続けたい。あとはタイミングをずらすプレイは、さらに磨きをかけたい。得意とする分野なんで。味方をもだますパスやシュート。そういった動きが、自分の武器だと感じています。

――いまさらすぎる話ですが、バスケットボールという競技の性質上、田臥選手だけでなく、日本人選手は『身長の低さ』というハンデを背負っています。

田臥 ですね。でも、何かしらの方法がある。高さで勝てないなら速さで。速さでもかなわないなら、先に走り出すことでカバーできる。誰にでも、必ず武器になるものがある。そういう意味では平等なんです。だけど、武器を磨くために、やること、やらなければいけないこと、いっぱいありますね。うまくいかない事だらけですから(笑)。でも、バスケが好きだから、そのための努力は、苦じゃないんで。

――最後に、厳しい質問をさせてください。世間では、田臥選手を『過去の人』と捉える風潮もあります。バスケットボールファン、田臥ファンは肩身の狭い想いをしつつ、だからこそ、「もう一度、NBAの舞台へ」と願っていると思うのですが、いかがですか?

田臥 それは、僕が1番、思っています。誰よりも。

        ◆

 田臥は、憤りも、気負いも感じさせず断言した。運命に抗ったものだけが辿り着ける場所がある。神様、マイケル・ジョーダンは、こう言ったといわれている。

「Out of my way. your fate. I'm going through!」(運命よ、そこをどけ。オレが通る!)

 田臥勇太は、目指し続けている。運命の、常識の、その先へ――。

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